Quantcast
Channel: あたちのモンハン日記
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2669

Recollection No.2_01

$
0
0


(彼女は酷く咳き込んでから、別れを告げることになった我が子の想いを語った)

「私があの子を生んだのは、ここに逃げてきてすぐのことだったわ。酷い吹雪でね・・・でも難産じゃなかったの。寒くなかったのかって?そりゃあ最初は「寒かったと思う」けど、陣痛でそれどころじゃなかったわ(彼女は私に向かって微笑む)。ホットドリンクや栄養剤やら、いろいろ飲まされていたからね・・正直、記憶はあまりないの。でも、あの子が生まれてきた時のことは今でもはっきりと覚えているわ(彼女は静かに目を閉じる)。今まで吹き荒れていたブリザードが、その物凄い音と共に突然止むと、赤ちゃんの産声が耳に入ってきた・・・。(我に返ったように目を開ける)すると次の瞬間、目の前に、私達の赤ちゃんの姿があったの!「よくやったね!」って興奮した夫が、毛布にくるまれたあの子をいつの間にか晴れ上がっていた青空に抱き上げると、空から白い羽衣が舞い降りてきたわ。それを見て私はすぐに分かったの。あの子が天使の生まれ変わりなんだってことを(我が子を見つめながら夫に寄り添い、手を握り合う)。無事に出産できたのはイヴァンのおかげ。助産だってイヴァンが手伝ってくれたのよ?「落ち着いて!ヒッ・ヒッ・フ~~~~!!」って、最初は馬鹿にしてるんじゃないかって思ったけど、博識の夫で本当に助かったわ(顔を見合わせて笑う二人。途中、彼女は深く咳き込みながら夫に支えられる)。この通り、私の体は良くないけれど、あの子は大丈夫。それだけは保証するわ。だからあの子をよろしくね。え~と・・・そうそう。ジョン・アーサーさん」

以上「アクラ探索記」より




母の言葉が刻まれたこの手記をアカデミーの書庫より見つけた時、すでに私は生まれ故郷から離れ、旧大陸(昨今では現大陸とも)のドンドルマを拠点にハンターとして活動していた。


父の名前はイヴァン・ヴァレノフ。


賢くて寛容で、いつも私を正しい方向に導いてくれた。


父は竜人だった。


故に父は当時シュレイドで起きていた竜人狩りから逃れる為、既に私を身籠っていた母を連れ、北の大陸アクラを目指した。


母の名前はガブリエル・ヴァレノフ。


父と違い、普通の大陸人だったけれど、父とは違った聡明さと清廉さを持ち合わせた愛情深い素敵な人だった。


母は極寒の地、アクラで私を生んでくれた。


だからその時の記憶が記されているこの手記の一ページを、私は今でも宝物のように大切にしている(できれば手記をそっくりそのまま頂戴したかったが、書庫にあるすべての写本は神経質な自己欺瞞者、ギュスターヴ・ロンの「監視下」に置かれていたので、その一ページだけを破って持って来るのが精一杯だった。アーサーがその後、手記を確認したのかどうかは分からないけど、彼が「神隠し」になってしまった今では、貴重な手記の一ページが破られていることを他の書士隊は、さぞ不思議に思っているでしょうね)。




私の名前はオクサーヌ・ヴァレノフ。




この記憶を共有しているすべての人に




今こそ真実を知ってもらいたい。










Recollection No.2_01










私が生まれたアクラという大陸は北陸故、極寒の厳しい環境だったけれど、あたたかい両親の愛情のもと、私はすくすくと育っていった。


極海に広がる銀盤の世界や、気候変化の激しいツンドラ地区は私に生き抜く為のサバイバル術を教えてくれた。


私の記憶が正しければ、初めての狩猟は三歳の時だったと思う。


父から借りた(正確には父の目を盗んで持ち出した)狩猟ナイフで食料確保の為、ポポを仕留めたのが初めての「ひと狩り」だった。


とにかく暴れまわるポポを動けなくするのに悪戦苦闘した記憶しかないが、「滅多突き」されたポポが白い息をぜえぜえ切らせながら、真っ白な雪の大地を染めるように、まだ温かい真っ赤な鮮血を流して倒れている姿は強烈に私の脳裏に焼き付いている。


ポポの優しい瞳から次第に生気が失われていく中、それとは真逆に高揚してやまない鼓動に肩を弾ませながら、私は最期まで見届けた。


その時間がとても長く感じたのは、動く命を初めて殺めたことによる罪悪感からだったのだろう。心が揺さぶられた。そして怖かった。


その後、少し落ち着きを戻した私が父の手を引っ張って倒れているポポのもとに連れてくると、父はまず私に「これはお前がやったのか?」と聞いてきた。


私が「うん!しゅごいでしょ!」と答えると、父は黙って私を抱きしめ、そしてすぐに私を促し、一緒に大陸の神様に対するお祈りを捧げた。そこで私は命の尊さを痛感した。


この初狩猟が私のハンターとしての才能を開花させたのかどうかは分からないけど、それからというもの、父は狩猟に出かけるときは私を連れ、ハントに関する知識をたくさん教えてくれた。


そして同時に私達が生きていくことの過酷さや、生活に必要以上の狩猟をしてはいけないこと、そして生命が繋ぐサイクルに対し、常にリスペクトを怠ってはならないということを父は教えてくれた。


母は病気を患っていたので、しばしば咳き込むことが多く、基本的にゲルから離れることはなかった。だから私が父のアシスタントに「合格」してしまったことが最初は面白くなかったようだ。けど母は、父がこの極寒の地で狩猟や採取を行うのは食料確保などの為だけではなく、自分が飲む薬を作るのに必要な素材を集めていることもまた知っていたので、私がそれを手伝うことに反対はしなかった(むしろ喜んでいてくれた)。


私が父の「狩猟バディ」として成長していく中、四才の誕生日を迎えた朝、母が白いドレスを私にくれた。


聞けば、私が生まれた直後、空から舞い降りてきた白い羽衣を大切に保管しておいた母が、それをもとに裁縫してくれたのだという。


まだ大きくなる私に合わせて、かなりサイズが大きめに作られていたが、私はその白いドレスがお気に入りで毎日その長い裾を引きずりながら白銀の世界を駆け回った。


不思議なことにこのドレスを纏うと寒さは感じず、防寒服の代わりとなった。


その頃にはしっかり自分の足で好きな場所に行けるようになっていた私は、母の目を盗み、ドレスを纏ったままゲルを飛び出し、少し離れたエリアに行ってみた。


そこで氷牙竜に遭遇した。


氷牙竜は私を捕食しようとその鋭い眼光を向けてきた。


私は父から護身用に渡されていた狩猟ナイフでその氷牙竜を撃退し、「戦利品」として頂戴したその「おそろしい牙」(後に新大陸へ渡った後、それが「琥珀色の牙」という名前だと初めて知る)を引きずりながらゲルまで持って帰り、両親を驚愕させたの同時にこっぴどく怒られた(それから暫くは父と出かける時、私の首に「リード」が付けられた)。


そしてこの氷牙竜との狩猟で気づいたのだが、この白いドレスは、汚れることはなく、それどころか傷がついたり、破れることもなかった。そしてそれは今も同じである。


こんなこともあった。


いつものようにドレスを纏い、氷牙竜がくれた「おそろしい牙」をもとに自分で作った「お手製ランス(牙を研ぎ、それをそのまま槍身にしたもの)」を背負いながら、父のハンティング・アシスタントをしていたとき、角のように長く発達した鼻先を持つ大型の飛竜種に遭遇した(今ではその飛竜種は暴鋸竜(ぼうきょりゅう)と呼ばれているが、当時は命名がなく、私は今でも「鼻がトゲトゲした危なげ子」と呼んでいる)。


その「謎の飛竜種」は私を庇う父に襲いかかり、その鋭利な鼻を使って父の腹部に傷を負わせた。


それを目の当たりにした私は激昂し、自前のランスで無意識に突撃して、代わりにその飛竜種の腹部に「おそろしい牙ランス」の尖端を突き刺してやった。


その飛竜はよほどの激痛だったのだろうか、咆哮をあげ、お腹から血を吹き出しながら慌てて逃げて去っていった。


興奮冷めやらぬまま、飛竜が逃げていくのを見届けると、すぐに父のもとに駆け寄った。


父は無事であった(手持ちの薬草を傷口におさえていた為、すぐに良くなり、傷も残らなかった)。


父は安堵する私を「目をまあるくして」見ていた。


はじめは獰猛なモンスターを撃退させた「誇れる娘」を「尊敬の眼差し」で見ているのかと自慢げに思っていたのだが、それは違った。


私が着ていた白いドレスに撃退した飛竜の返り血が「べっちょりと」ついていたのだ。


「こりゃいかん」と慌てて、血を拭おうとしたのだが、そんなことをする必要もなく、白いドレスはまるで撥油性素材であるかのように「べっちょり」付着していた血を白い雪の大地へと受け流していった。


父はその不思議な光景を「あんぐり」して見ていたのだった。


だから私は父にこう言った。


「いいでしょ?これ」


と。


私が六歳を過ぎたあたりから、父は私のことを「小さな用心棒」と呼ぶようになった(この頃はリードを付けられることもなくなった)。


父と一緒に雪山を探索しに行った時、生まれて初めて雪獅子と遭遇したのだが、見事、彼が投げてくる雪玉を「打ち返し」逆に歯を折ってやった。あの時見せた父の痛快な笑顔は絶対に忘れることはないだろう。


母にそのことを伝えると「二度と雪山には行くな」と、父と一緒に怒られた。母なりに私達を心配していたのだろう。


毎日が楽しかった。


毎日が愛情に満ちあふれていた。


しかしその幸せは長くは続かなかった。


一年後、私のふとした決断が、両親との決別に繋がるとは、このときは夢にも思わなかった。




To Be Continued







★次回ストーリーモードは11/22(木)0時更新予定です★




Viewing all articles
Browse latest Browse all 2669

Trending Articles