
ゴトゴトゴトゴトゴト・・(今となっては見慣れた豪奢な内装を施した馬車の小窓から「通勤中の景色」を眺めるように青空に映える雄大なヒンメルン山脈を見つめている「仮面越しの」一人称視点)
ボリボリ・・(視線を前に向けるとこちらもお馴染みの特等席(進行方向側)のシートにふんぞり返って座っているジェイソン・ウーもまた延々と続く同じ景色に対し苛々した様子で無造作ヘアを掻きむしっている)
ジェイソン「あーーー最初は感動したんだけどなぁ・・。こう何度も見ていると早く到着して欲しくてたまらなくなってくる。ギルドのハンターの自叙伝を読んだことがあるが、彼らの多くもまた、同じ狩猟フィールドを行き来するルーティーンワークと見飽きた現場に対し、次第にストレスを感じるようになっていたそうだ。人間とは非常にワガママな存在だよ。他の生物はそんなこと微塵も感じず生態系を守る為、日々同じ作業を繰り返しているのにね。人間は彼らが持つその忍耐力をリスペクトしなければならない・・とは、書士隊の誰かが言っていた台詞だそうだけど・・・あ~そうだ。ガイウス・ウィプサニウス・アグリッパだ。彼の哲学は好きなんだ。保守的じゃなく、自然に敬意を払いながらも研究のためならば命をも顧みない挑戦的な姿勢が実に素晴らしい」
ジーナ「ギュスターヴ・ロンとは違うと?」
ジェイソン「ハハッ!!君のそういった見識の広さにも脱帽してしまうよ。だが見てろよ、ジーナ・ジラント。今に僕も君が認める男になってみせる。中年になった今からでは遅いだなんて言わせないぞ。肉体だけは邸の中で鍛えていたからな。そりゃまぁ~、君らには遥か及ばないが・・これからだ。これからの僕を見ていてくれたまえ」えっへん
ジーナ「ご期待しています」フフ・・
ジェイソン「それは息子にもか?あーーー今のは意地の悪い質問だったな。君を拘束するつもりはない。自分の好きな時に神殿と王都を行き来してくれて構わない。それもルチア・ロッティの活躍次第だが・・。なぁ、これは提案なんだが、ルチア君の働きによっては、彼女を君らの仲間にしてやれないか?」
ジーナ「神殿で布教活動をするつもりはありません。我々にとって大切なのは商才よりも信仰です。彼女にその資質を見出したのならば、検討致しましょう」
ジェイソン「すまない。彼女・・いや、君も含め、彼女たちには幸せになって欲しいんだ・・」(うなだれながらまるで最後の言葉のように小窓の向こう側に見える景色をぼうっと眺めながら呟くように小声で話している)
ジーナ「名家の血筋に蝕まれ、絶望の淵にいたあなたは今、ヒンメルンに希望という光を見出し、羽ばたきはじめた・・・こうやってあなたとこの馬車で話す機会がなくなると思うと少々残念ですが、旅立ちとはある意味、過去を捨て去ることでもあります。光と闇と同じ表裏一体の関係。あなたはその2つを知ることになるのですね」
ジェイソン「君の教化をこのまま受け続けたい反面、それじゃ駄目だとわかったんだ。感謝しているよ、ジーナ・ジラント」
ゴトゴトゴトゴト・・・(視点の主が小窓より見える山道(進路方向とは逆向き)を覗き見ると、後方から荷車を引いた馬車がこちらと同じ速度を保ちながら続いてくるのが見える)
ジェイソン「きっと喜ぶぞ。対戦相手がいないが故、邸で眠っていたダーツやビリヤード台に世界各国の珍しいボードゲームの数々・・・アーロンにバックギャモンのやり方を教えてやるのが今から楽しみだ。夜はみんなで焚き火を囲みながら、僕が孤独の最中に覚えたギターの音色に乗せて大合唱するんだ。おっと、超高級肉焼きセットも持ってきたからな!雪山でBBQも楽しめるぞ♪」フフフフ
バカァ~~~~~ン!!(例の如く、視点の主の後方にあるスライド式の仕切りがけたたましく開かれる音が静寂をぶち壊すように車内に響き渡る)
スヘイラ「こりゃ~~~~~!!カレッジのオリエンテーションに行くんじゃニャいんだぞ!!もっと気を引き締めるニャあああああ!!」シャアアアアアア(後ろを振り向くと同時に開かれた小窓いっぱいにドラゴンマスクを被った彼女のけたたましい顔面が飛び出してくる)
ジェイソン「カレッジ・・いいね。そういうコンセプトもあったか」ぽん(手のひらを打つ)
スヘイラ「まったく・・報告ニャ」むにゅっ(小窓の下枠にドラゴンマスクの顎を猫らしく乗っける)
ジーナ「どうかしましたか?」
スヘイラ「山道の前方にあちきらと同じ猫系の獣人が歩いているニャ」
ジェイソン「・・・・・・・・・。様子を見て、通り過ぎようか」了解ニャ(とスヘイラ)
ゴトゴトゴトゴト・・・
ゴトゴトゴトゴト・・・(それとなく小窓の外を覗き始めるジェイソン)
ゴトゴトゴトゴト・・・(視点の主も窓の外を見るとシュレイド系の民族衣装に身を包んだ紫色の毛色をした愛らしい猫系の獣人が、息を切らせながら登山用のリュックを背負って歩いているのが見える)
ジェイソン「ベックフォード!スピードを落とせ!!」(仕切りの向こう側から「かしこまりました」という声が飛んでくる)
ゴトゴトゴトゴト・・・・・・ガチャッ・・(歩いている獣人と伴走するように寄り添う馬車の中から開き窓を開けるジェイソン)
ジェイソン「君!目的地は!?」ゴトゴトゴトゴト
紫猫「白雪神殿という所を目指しております」ハァ・・ハァ・・
ジェイソン「聞いたか、ベックフォード!?停車だ!!彼女を乗せていく!!」
Recollection No.1_47
ゴトゴトゴトゴト・・・(視点の主の目の前では満足げな笑顔を見せるジェイソンの姿が)
ゴトゴトゴトゴト・・・(左隣を見ると先程の紫毛の獣人がモジモジしながら愛らしい瞳でこちらを見上げている)
紫猫「私が乗っては重くなってしまい、ご迷惑を掛けてしまうのでは・・?」
ジェイソン「大陸世界の馬はモンスター同様、非常に逞しい。それに我々も白雪神殿に行くところだ。気にするな」
紫猫「大変感謝しております・・・」
ジェイソン「ああ、僕の名前は・・・・フランク・・・フランク・ヴューラーだ。そちらの彼女は・・・ボディガードのアンジェリカ。運転席にいるのが執事のベックフォードと同じくボディガードのヘラだ」(お互いに軽くお辞儀するアンジェリカこと視点の主と清純な印象を受ける紫猫)
紫猫「本当にヴューラー様にはなんと感謝してよいものか。助かります」
ジェイソン「構わないさ。それより、君のその格好を見る限り、シュレイド出身のようだが、何処から来たんだ?」
紫猫「ミナガルデからです。顔見知りの行商人から、なんでも白雪神殿という所で、住み込みで働ける獣人を募集しているとお聞きして、ここまでやってきました」
ジェイソン「わざわざ・・・何か理由があるようだが・・ミス・・・」
紫猫「おトキです」
ジェイソン「よし、おトキさん。もしよかったら事情を聞かせてくれないか?」
おトキ「幼い頃、両親をモンスター被害で亡くした私は、ミナガルデのとある奇特なご老人に拾われ、住み込みで働かせてもらっていたのですが、先日、その御方がお亡くなりになり、私同様、身寄りのなかったご主人様の葬儀を終えると同時に職を失ってしまいました・・。そこで次の職を探そうと路頭に迷っていた途中、白雪神殿の話を聞き、面接を受けてみようと思ったのです」
ジェイソン「なるほど・・流暢な喋りは人間と暮らしていたからか・・。では、その名前も主人から?」
おトキ「はい。とても気に入っています」にこり
ジェイソン「うん。たぶんだけど、君は白雪神殿に馴染むだろう。君から溢れ出るパーソナリティのテイストが非常に彼らとマッチングする姿が目に浮かぶ」フッ・・
おトキ「そんな・・まだ採用されるかどうか・・。ヴューラー様は神殿の方々をご存知なのですか?」
ジェイソン「ああ。盟主、アー・・・あ~~~・・バーニー・ブラントは朋友でね。うまくいけば、今日から君と僕は同じ屋根の下で暮らす仲になるかもしれない」えっへん
おトキ「ヴューラー様のような高貴な御方が・・神殿の暮らしはさぞ風雅なのでしょうね」
ジェイソン「フランク。気軽にそう呼んでくれたまえ。それと、神殿は修練者たち・・ミナガルデでいうところの狩人に近い社会階級とでもいおうか・・世俗から離れ、高尚な志を目指した人間たちが募る場所で、彼らの仕事・・君にはクエストといった方がピンとくるかな。暮らしのために鉱石の採掘や、ヒンメルンの希少な資源の採取がデイリーオーダーというわけさ」えっへん
おトキ「自給自足の生活なのですね。ではフランクさんもその修練者さん達のお仲間に?」
ジェイソン「ああ。君と同じくらい高揚している」にかっ(まるで少年のような笑顔をみせる富裕層の中年貴族)
おトキ「フランクさんは高潔な精神をお持ちの御方ですね」にこ
ジェイソン「・・・・・・・・・・・・・・・」
おトキ「??」
ジェイソン「いや・・すまない。そんなことを言ってくれたのは、君が初めてだ・・・・・ありがとう。その言葉に恥じぬよう、これからの人生で証明してみる」(感慨にひたりながら胸に手を当て、彼女の言葉を心に刻みつけている)
ゴトゴトゴトゴトゴト・・・・
ジェイソン「そうなんだ。僕より彼女の方がボウガンの使い方は遥かに上手い。僕なんてトリガーを引いた瞬間、尻もち。ケルビは何事もなかったかのように優雅に歩いたままさ。こうやってね」トットットットッ(と両手で偶蹄目が歩く仕草を真似てみせる)
おトキ「うふふふふ。フランクさんったら」(もふもふの手を口にあてて笑っている)
ジェイソン「でもこれからは違うぞ、アンジェリカ。すぐに君の護衛がいらなくなるくらいに成長してみせる」えっへん
おトキ「では私の仕事は、フランクさんをはじめとする、修練者さん達の支援をすることですね?」
ジェイソン「ああ。具体的にはまだ決まっていないようだが、お屋敷のメイドを思い浮かべるのが一番イメージしやすいと思う。と言っても、神殿内では階級の差別は無く、意味もなさない。今の盟主は、そういう男なのさ」ゴトゴトゴトゴト・・(窓の向こうを見つめながら、まるで旧知の親友であるかのように誇らしげに語っている)
おトキ「ああ・・いけない。また緊張してきちゃった

ジェイソン「君のキャリアと人柄は、今の神殿に必要だ。僕からも盟主に推薦しておこう」
おトキ「そんな・・・ありがとうございます!フランクさん!」へこり
ジェイソン「・・・そうさ・・ジェイソン・ウーは変わるんだ・・・・これ以上、凋落の運命を辿るものか・・」
おトキ「??」ゴトゴトゴトゴト(慎ましい笑顔のまま、少しだけ首をかしげる)
ジェイソン「さぁ、僕らの未来が見えてきたぞ!」
ゴトゴトゴトゴトゴト・・・・(窓の外に見える山道の曲がり角の向こう側より、残雪に覆われた断崖に左右後方を囲まれた白雪神殿が見えてくる。その幻想的な光景を身を乗り出して見つめるおトキとジェイソンの姿もまた....)
To Be Continued

★次回ストーリーモードは7/18(木)0時更新予定です★