ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・・・・
(黒雲がとぐろを巻く薄黒い終焉の天空を目指すように険しい岩場を登っていく一人称視点)
ジーナ「その者の名は宿命の戦い。その者の名は避けられぬ死」ザシュッザシュッ(岩場を砕かんばかりの力で掴み上げながら駆け登っていく)
バッ(頂上に飛び上がると同時に近くの岩場に身を伏せる)
ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」スッ・・(岩場の影からそっと平坦な山頂エリアを覗き見る)
ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・・・・
(異常なまでの天候の変化に驚きを隠せないロザリー親子の狼狽する姿が見える)
おぎゃああああああああ!!
(父親に抱かれた赤子が拒否反応を示すようにけたたましく泣き叫ぶ中、アーロンとアースラは愕然とした表情で宵闇と化していく大空を共に見上げている)
ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ!!
(大気が擦れ合う重厚なアポカリプティックな怪音がヒンメルン全域に轟き、同時にアースラが何かに気づいたように暗雲の向こう側を指差している)
スーーーーーーーーーーーーン・・・
(暗闇に覆われた空を見上げると、太陽の姿がすっぽりと月に覆われており、その円を縁どる微細な隙間からコロナの異形な揺らめきが翳りに反発しているかのように猛々しく迸っている)
ジーナ「ハハハハハハハ!!!!喊べ!!惨めに死にゆくお前の友に哭礼せよ!!!!」ボギャアアアアアアアアア!!(見上げる闇雲に覆われた空を切り裂きながら巨大な黒龍が大咆哮をあげながら舞い降りてくる)
Recollection No.1_62
ゴオオオオオオオオオオ!!
(荒れ狂う淀んだ色の積乱雲を突っ切りながら急降下していく一人称視点)
ボギャアアアアアアアアア!!
(視点の主が大喝をあげると一瞬にして雲が飛び散り、暗闇に包まれたヒンメルン山脈の全貌が視界良好に見渡せる)
バッサバッサ!!バッサバッサ!!
(左右から聞こえる重たく力強い翼の音と共にゆっくりと山頂の方へ降下していく。また視界には、この視点の主がドラゴンであることが窺える黒く長く伸びた竜族の特徴的な鼻先が映っている)
バッサバッサ!!バッサバッサ!!
(見下す平坦な山頂エリアから、小さな人型の男女が身を寄せ合いながらこちらを見上げているのが確認できる)
フオン!!フオン!!
(視点の主が威嚇するように翼を大きく羽ばたかせながら、山頂の上に留まると、その脅威的な風圧により、山頂の男女はよろめいてしまう)
フオン!!フオン!!
(山頂付近を確認するように目を凝らすと、男女から少し離れた岩場の影で白装束を纏った女性がひれ伏しているのが確認できる)
フオン!!フオン!!
(再び視線を男女のもとに戻すと、態勢を整え直した二人がこちらの様子を伺いながら、ゆっくりと後退していくのが見える)
「ロザリー家の末裔、アーロン・ロザリーよ」
!!(視点の主が強い怒りと穢れた苦痛に満ちた低音の発声をあげると、それに驚いた男女が思わずその場で恐れ慄く)
????「我の名はマモーナス。貴様の父、デーモン・ロザリーと契約を交わした者だ」
アーロン「親父と・・・・どういうことだ!?」(薄暮に覆われた世界の下からこちらを見上げながら叫んでいる)
マモーナス「よく聞け、ロザリー家の末裔よ。かつてシュレイド王国で投獄されたデーモン・ロザリーは、処刑される前夜、自らの絶望と引き換えに我と黒の契約を交わし、そして我が授けた謀略に従って変革を起こした結果、シュレイドの新たな王として君臨した」
アーロン「自らの絶望と引き換えに・・・黒の契約・・・?」
アースラ「その代償が・・・・大いなる竜の災厄・・・・」
マモーナス「そうだ。本来であれば災厄と共に契約は満了するはずであった。だが、貴様の父、デーモン・ロザリーはあろうことか契約に反し、シュレイドを見殺しにしてまでヒンメルンへ逃亡した。デーモン・ロザリーの心は絶望に満たされていなかったのだ。まだ赤ん坊であった貴様を連れて逃げたのがいい証拠だ」
アーロン「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(泣き続ける我が子の顔を見ている)
マモーナス「そしてデーモン・ロザリーは誓約を果たさぬままヒンメルンで朽ち果て、息子である貴様に契約を承継させた。そして今、契約を果たす為、我は降臨した」
アーロン「俺が契約を・・・」
アースラ「幸福を・・絶望に変えるため・・・・」
マモーナス「ようやく自分の幸福とは何か悟ったか。幸福が絶頂にたつと同時に天秤に懸けられるのが、それを失った時に感じる絶望なのだ。幸福が屠り削られ、その密度が減少していけば、対極に置かれた絶望の比重が増す。それに気づいた者は、満たされた幸福を少しでも取り返す為、志や高徳を捨て、精神の幸福以上に所有欲に支配され、亡者の如くもがき続ける様になる。それこそが強欲のはじまりであり、その全てを失った者の失意と絶望こそ、我の幸福なのだ」
アースラ「やっぱり・・・お父様はあの龍から身を隠すために、あなたを牢屋に閉じ込めて、幸福に満たされない暮らしをわざと送っていたのよ。すべてはあの龍に一矢報いるため・・・その希望をあなたに託したのよ!!」
アーロン「・・・・・俺に同盟を再建させ・・すべてはきたる災厄に備えるため・・・」
マモーナス「だが、父の策略とは裏腹に、貴様は個人の自由と気高い理想を選択した。我はその強欲が齎した幸福が今まさに絶頂期であると見定め、その幸福の境地にある絶望をいただきに来てやったのだ」
アーロン「絶望とはなにか!?それはお前が齎す災厄にこそにある!!すべては貴様の詭弁だ!!」(背中の大剣を納刀して構える)
アースラ「そうよ!!あなたは私達が団結するのが怖いだけ!!だからそうなる前に・・・・・・・っ!!」(言葉の途中で何かを悟り、口を閉ざす)
マモーナス「絶望を喰らいにきたのだ」
スゥーーーーーーーーーーーーーー
(視点の主が大きく息を吸い上げ、首の方向を山岳地帯の下に見える洞窟に向ける)
アースラ「・・・・あの方向・・・みんながいる採掘場だわ!!」
アーロン「なにをする気だ!?」
マモーナス「滅びよ。闇の中で」
アースラ「やめてぇええええええええええええ!!!!!」
ドウーーーーーーーーーーーーーーーン!!
(振動と共に視点の主の口から巨大な紫紅色の火球が発射される)
ヒョオオオオオオオオオオオオ!!
(隕石のように急降下していくマゼンダの雷放電を帯びたエネルギー体の風圧に吹き飛ばされるロザリー親子)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(倒れたアースラはすかさず身を起こし、火球の後を追うように四つん這いになって崖っぷちを覗き見る)
ドガアアアアアアアアアアアン!!
(次の瞬間、採掘場付近を中心に赤紫色の雷光を含んだ激しい火炎状の大爆発が轟音と共に大惨事の破壊を引き起こす)
アーロン「アースラ!!」(爆発の衝撃で崖下に落ちそうになるパートナーを抱き寄せる)
ンボオオオオオオオオオ・・・・・
(採掘場があった山腹から爆炎を包み込む黒煙が上がっている確認できる)
アースラ「そんな・・・・・・みんなを助けに行かなくちゃ!!」(煙が上がってくる崖下に飛び込もうと試みるもアーロンによって取り押さえられる)
アーロン「よせ!アースラ!!」あああああああああん!!(胸に抱いている赤ん坊もまた泣き叫んでいる)
アースラ「離して!!お腹に赤ちゃんがいる子もいるのよ!?」あああああああああん!!
ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・・・・・
(爆発の衝撃で地震のような振動を見せ始める山頂エリアにてアースラを抱き寄せながら地面に身を伏せるアーロンを冷淡に見下ろしている俯瞰視点)
ドドドドドドドドドド!!
(山を覆う残雪の雪崩と同時に岩場もまた崩落し、山腹上の神殿目掛けて転げ落ちていく)
ゴオオオオオオオオン・・・!!
(鈍い衝撃音と共に津波のような雪崩と物理兵器の如し落石が白雪神殿に襲いかかる)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(その災厄による惨劇の光景を山頂より恐る恐る確認するアーロンとアースラ)
アーロン「神殿が・・・・・」
アースラ「そんな・・・・・どうして・・・・」(弱々しくその場に泣き崩れる)
マモーナス「この絶望の絶景こそ、貴様の父親が残した遺産なのだ。そしてこの契約はロザリー家の血筋が続く限り有効となる」
アーロン「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(何かを悟ったように泣き続ける我が子の顔を見つめる)
マモーナス「契約を終結させたくば、その子を我に捧げよ。さすれば契約を満了としよう」
アーロン「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」あああああああああん!!(母と同じく澄んだ蒼髪を持つ赤ん坊を決死の覚悟で見つめている)
アースラ「騙されては駄目!!お父様とみんなの敵を討つのよ!!」
アーロン「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」あああああああああん!!(暗闇に覆われた世界の中、親子の足元には吾郎から手渡された蒸籠が無残に転がっており、より悲壮感を漂わせている)
アースラ「バーニー!!」
ザッザッザッザッザッ・・・
(ロザリー親子が位置する近くの岩場よりジーナが徐に姿を見せながら歩み寄っていく)
ジーナ「アーロン・ロザリー」
アーロン「・・・・ジーナさん・・!?」(その懐かしい美声に誰よりも早く反応を示し、思わずその名を口走ってしまう)
ジーナ「その子を捧げなさい。さすればあなたは、身も心も蝕む因果の連鎖から解き放たれるでしょう」
アーロン「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」あああああああああん!!(我が子があげる慟哭など聞こえていない様子で、かつての想い人を食い入るように凝視しながら耳を傾ける彼の表情もまた、青年期のような純真な風采を見せているのであった...)
To Be Continued

★次回ストーリーモードは9/9(月)0時更新予定です★