どこどこ!?ほら!あそこ!!
(と右舷に駆け寄っていく子どもたちを身軽に追い越していく)
バッ!!(身の丈ほどの船縁の上を両手で掴むと同時に飛び上がり、半身を乗り上げる)
ヒュオオオオオオオ・・・
(見渡す大空の向こう側には雲を貫く険しいヒンメルン山脈が連なっている)
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(視点を山脈側に絞り、注意深く観察していく)
ヴィルヘルム「おい!モンスターはいたのか!?」ザワザワザワ(背後から聞こえる子どもたちのどよめきに紛れて彼の声が投げかけられる)
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」
ヒョオオオオオオオオオ・・・・
(山頂を覆う霧のような雲間に一瞬だけ赤い火竜が飛翔していくのが見える)
ムーア「やっぱり・・・・あの子だ・・」ホッ・・(その姿を確認すると自然に安堵のため息が出る)
船長「うむ・・リオレウスか・・」(左を向くと同じく船縁越しに双眼鏡を覗いている凛々しい古参のベテラン船長の姿が)
ムーア「大丈夫だよ。ここからヒンメルンは遠いし。それに襲ってこないよ」
船長「そうだな。よし!出発だ!!」(生徒たちの不安感を落ち着かせるように船員たちに号令をかける)
ザワザワザワザワザワ・・・(引き続き興味津々に船縁の向こう側を覗き込む子どもたちを尻目に、こちらを心配そうに見つめているキンババとヴィルヘルムのもとに歩み寄っていく)
ヴィルヘルム「ひょっとして、お前んちの近くにいるワイバーンか?」
ムーア「だいじょぶ、だいじょぶ。こっちには来ないよ」
キンババ「そうだよね。今までだってヴェルドがモンスターに襲われたことはないしね」ふ~~
ヴィルヘルム「つまんねぇの。大砲をぶっ放してみたかったんだけどな」ちっ(その背後に見える「憧れの大型二重舵輪」に颯爽と操舵士が駆け寄っていく)
ムーア「ねぇ、そんなことより船が出るよ!」
ボオオオオオオオオオオオ!!
(大窯型の炉から一際強い炎が吹き出る)
操舵士「みんな!振り落とされるなよ!!」グリン

ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・・
(船体が角度を調整するようにその場で180℃旋回していく)
キンババ「すご~い!!」
ムーア「校長にいってきますしよう!!」ダッ

バッ(船縁から身を乗り出して下を覗き込む。その横から続いてくるヴィルヘルム)
ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・・
(ゆっくり回転していく船体の下からこちらを見上げている校長や父兄の姿が)
ヴィルヘルム「まだいるぞ!!お~~~い!!」
キンババ「ねぇ、危ないよぉ~

ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・・・・・・・(校長がこちらに気づき、大きく手を振ると、船もまた角度調整が終わったのか静かに動きを止める)
バッ(身を乗り出したまま振り返り、舵の前で両腕を組んで勇ましく立っている船長を確認する)
船長「出発だ!!」
ゴオオオオオオオオオオ!!
(号令と同時に船体がゆっくりと前進していく)
キンババ「ねぇどうするの!?出発しちゃったよ!?」
ムーア「はい、じゃ、せぇ~~~の・・・・」すぅ~~~~~(大きく息を吸い込む。それを察したのかヴィルヘルムも息を吸い上げる。そんな二人を見たキンババも慌てて息を吸う)
いってきまぁ~~~~す!!!!
Recollection No.5_34
ゴオオオオオオオオオオオ
(子供たちが駆け回る(ギギはまだ海賊ごっこをしている)甲板に風が突き抜けていく中、舵をとる操舵士を見上げている)
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・」じーーーーーー
操舵士「・・・・・・・・・・そんな目で見ても駄目なものは駄目だ」
ムーア「一回だけ」
操舵士「しつっこいぞ。その一回が大惨事を引き起こすんだ」
ムーア「可能性の話でしょ?あたちはそんなドジは踏まない」
操舵士「お嬢ちゃんを信頼してないわけじゃない。けど、お嬢ちゃんにそれを許したら、他のみんなにもやらせてあげないといけなくなるだろ?」
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ちら
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(周囲を見渡すと「同じ考え」の生徒たちが羨ましそうに「憧れの目つき」で舵輪を見つめている)
操舵士「仮にお嬢ちゃんがうまくやれたとしても、他の生徒はどうだ?」
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ちら
ハァ~~~~~~~~~♪
(「憧れの目つき」の中には、一段と目を輝かせている、まだちいちゃいミミの姿が)
ムーア「だね。残念だけど、あたちもまだ死にたくない」
操舵士「いい子だ。船内でも見てきたら?」
ムーア「そうする。またあとでね」了解
よぉ~し、これで通れるぞぉ~
(船内に降りる階段では、ようやく例の荷物の撤去作業が終わったようで船員たちやそれを手伝ったと思われるパクの姿も見える)
ムーア「たいへんだったね」わぁ~~~♪(と我先にと船内の中に突入していく生徒たち)
パク「まぁね。よくもまぁ~あれだけ石ころを集めたもんだ」やれやれ
クロイ「ねぇ、あたし達も見に行ってみない?」
パク「ああ。行くだろ?」(とこっちに聞いてくる)
ムーア「クロイをがっかりさせたくない。二人で行っておいで」
パク「生意気だ」クシャクシャ(と視点の主の蒼髪ウィンドボブを撫でてくる)
ワアワアワア♪(と興奮気味で次々と船内に突入していく子供たちの後ろから、ガールフレンドの肩を抱いたパクが続いていくのを見届ける)
ムーア「さて・・・」
とっとっとっとっとっとっ(こちらを警戒しながら見ている操舵士の横を通り過ぎていく)
操舵士「予定変更か?でも駄目だぞ」
ムーア「知ってるし。船のさきっぽ見てくる」
操舵士「ああ、それなら、船首の女神像を覗いてこい。オススメのスポットだぞ」
ムーア「ここよりはね」ベェ~~~(と返すと笑顔の操舵士)
とっとっとっとっとっとっ(引き続き腕を組んで立っている船長を横切っていく)
船長「・・・・・・・・・・・・・・・・・」むぅ・・(と険しい表情で空模様を注意深く体で感じとっているのであろう)
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ビシッ

とっとっとっとっとっとっ(海賊ごっこをしている「ピーターパンみたいな格好」をしたギギを横切っていく)
ギギ「一緒にやるか!?今なら宿敵(ネメシス)の役が空いてるぞ!」
ムーア「やめとく。どうせやられ役でしょ」ちっ(とギギ)
とっとっとっとっとっとっ(船首近くに来るとビリー一味が何やらニヤニヤしながら船首像を覗き込んでいる)
ケイシー「本物なら相当いい女だぜ」ヒッヒッヒッ(と、白斑真緑なレンズのへんてこメガネを光らせながら気味悪く笑っている)
ビリー「ああ。絶対モデルがいるはずだ。砂漠の都市に行くのが楽しみだな」
デービス「おい・・」(とこちらに気づいた彼の目は「真っ赤に充血」している)
ムーア「また悪巧みの話?」
ビリー「なんだてめぇ。自分からやられにきたのか?」
ケイシー「あいにく、相棒は役に立たなそうだぞ」クイッ(と親指で示すその方向では、船縁でぐったりとしているヴィルヘルムの姿が)
ムーア「実は船酔いもちだったって、さっき発覚したの。それにあんた達なんて別にこわくないし」
ケイシー「謝るなら今のうちだぞ」シャリーン

ムーア「そんなのだってこわくないし。いつもルチアが使ってる剥ぎ取りナイフを見てるもの」
ケイシー「生意気なガキめ!!」
ビリー「よせ。いいか?てめぇを事故に見せかけてこっから落っことしちまうことだってできるんだぞ?」
ムーア「こっちだってね」
ビリー「決まりだな。デービス、そいつを連れこい」
デービス「今度は妙な玉は喰らわないからな」(再び不潔かつ不衛生なお手を伸ばしてくる)
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・」じりっ
ケイシー「おっと。逃さないぞ」バッ(回り込んでくる)
ムーア「むぅ・・・・・」
ビリー「どうする?土下座するなら許してやってもいいぜ?」
ムーア「誰がするもんか!!」ブッ

ビリー「ぎゃあああああああああああ」(それが目に入った)
ケイシー「このやろう!!」ガバッ

ムーア「やめろ!!はなせぇ~~~!!」じたばた

ビリー「かまわねぇ!!落としちまえ!!」
ムーア「やめろぉ~~~!!」
ボギャアアアアアアアアア!!
ビリー「なんだ!?」
ブワッサ・・ブワッサ・・・
(船首の前にゆっくりと赤い火竜が舞い降りてくる)
ムーア「ほえ・・・・・」ブワッサ・・ブワッサ・・(羽交い締めにされたまま、目の前を雄大に浮揚するリオレウスの青い瞳を覗き込む)
To Be Continued

★次回ストーリーモードは1/27(月)0時更新予定です★