クッチャクッチャクッチャクッチャ
(こじんまりとした石造りの質素な病院の休憩室。木製のダイニングテーブルの丸椅子に腰を下ろしたまま革製ブーツな両足を「パタパタ」させながら何やら口に頬張ったものをご陽気に咀嚼している)
ちら(それとなくテーブルに置かれた「盛り沢山な種実類(ロックラッカセイとロックラックルミだろうか)」が詰まった木製ボールの存在を確認する)
エスター「胡桃の方は割るのがとっても大変なの。砂漠の気候で極限まで乾燥された殻が岩の様な硬さでね。ピッケルで叩いてもダメなときがあるくらいなのよ」(テーブルの真向かいに腰を下ろした彼女がにこやかに教えてくれる)
ムーア「たくさん食べちゃって平気なの?」むんずっ(と胡桃を掴み上げまじまじと見つめる)
エスター「ナッツ工房の人と知り合いになってね。栄養がたくさんあるから是非って、たくさん頂いたの。だから遠慮しないでたくさん食べてちょうだい」にこっ
むんずっ

あむっとな

(それを聞いて安心したのか、一思いに二種類のナッツを無造作に掴みあげるとすぐさまそれを口に放り込む)
ムーア「おいちい」もしゃりもしゃり

エスター「お土産に持って帰るといいわ。あとで袋に詰めてあげる」
ムーア「正直、みんなには渡さないで、枕の下に隠しながら「夜な夜な」もしゃもしゃしたいけど・・こんな美味をみんなに隠している方が罪深く感じちゃう。ありがとう、エスター」あむっとな
看護婦アイルー「ニャんニャニャんニャニャ~~♪」ガラガラガラ(引き戸を開けて小粋な歌と共に部屋に入ってくる)
ニャッ!?(とすぐにこちらの存在に気づき、猫が豆鉄砲食らったみたいな顔する看護婦アイルー)
看護婦アイルー「失礼しましたニャ

エスター「こちらこそごめんなさい。すぐに戻るわ」
看護婦アイルー「い~ニャ、い~ニャ。今はそんなに忙しくニャいでしょ~?だから久しぶりの再会を楽しんで♪ちょっとお飲み物を取りに来ただけニャから」よいしょっとニャ(と、少し大きめな木製の物置棚に置かれた水筒(肉球マークがプリントされた)を手に取る)
ムーア「素敵なデザインだね」
看護婦アイルー「あニャ~~♪分かるぅ~?まだ巷に広まっていニャい最新グッズみたいニャの♪行商人さんを説得してね、うんと安く買っちゃったの。お気に入りニャ♪」パチリん(とウィンクかましてくる)
キュポん

ゴッゴッゴッゴッゴッ・・

(ボトルの蓋を開け、腰をえらく後ろに曲げながら両手に掲げた水筒をがぶ飲みする看護婦アイルー)
看護婦アイルー「乾燥地帯でしょ~?だから喉が乾くニャ」にこ(口元をフサフサの腕で拭いながら)
ムーア「お仕事を楽しんでるみたいだね」
看護婦アイルー「そりゃ~もぉ~~♪あっち(旧大陸)はまだまだ私達の種族は冷遇されがちでしょ~?でもこっち(新大陸)は違うニャ。どこの土地に行っても、人と同じように安心して働ける環境が整っているのニャ」
ムーア「それはいいことだね。あたちの家族にもアイルー科がいるよ」
看護婦アイルー「そうニャのぉ~~♪だからエスターと初めて会った時も自然に会話することができたんだニャ~♪偏見がニャいのはいいことでしょ~?あたしね、最近思うのニャ。近い将来、差別を受けている大陸中の獣人族に勇気を持たせるようニャ、食雑目を代表する英雄的ネコがこの新大陸から登場するんじゃニャいかって。獣人の未来もきっと、もっともっと明るくニャるってね♪」
ムーア「絶対なるよ。それにはみんなの努力と優しさも、もっともっと必要だよね」
看護婦アイルー「あニャ~~♪あなた良い子ニャ~~♪さすがエスターの家族だけあるニャね♪それじゃ、ごゆっくり。あ、それとロージーちゃんと、うんとうんと仲良くしてあげてね♪」
ガラガラガラ・・
ニャんニャニャんニャニャ~~♪
(ドアを閉めて出ていくと再び例の小粋な歌を歌いながら去っていく)
ムーア「いい所だね。こっちは」
エスター「いつしかまた新たな大陸が発見されれば、そっちが「新」って呼ばれるようになるわ。けど、確かにシュレイド地方と比べると先進的ではあるわね」
ムーア「あたちもそう思う。だってヴェルドと違って、みんな平等だもん」
エスター「それでも都市の中には一部だけど貧困層が暮らしている地域もあるわ。あなたの言うように、まだまだ考えないといけない問題はあるのよね・・」
ムーア「さっき病室で話していた人も?」
エスター「ええ・・・・なんでも幼い時に原因不明の奇病を患ってしまって、もう長いこと入院しているみたいなの・・。ご兄弟が医療費を工面してくださっているんだけど、余計にそれが本人にプレッシャーを与えて、自責の念にとらわれてしまっているのね・・・自分に否定的な人間になってしまったのよ。唯一の救いであった彼女もまた・・・」
ガラガラガラ・・(再びドアが開かれ、今日もまた綺麗なワンピースを着たロージーが入ってくるのだが、それ以上に目立つのは、その胸に抱いている鉢から飛び出た、彼女の身の丈よりも大きい一輪の極彩色の花であった)
ロージー「ねぇ、エスター、このお花・・・ムーアちゃん!!本当に来てくれたんだ!!」
ムーア「当たり前でしょうに。それよりそのお花、なにさ?」
ロージー「フフフ。これはね、「ドシュビシュカシュ」っていう、罪レベルな、とぉ~~ってもめじゅらしい(珍しい)お花なんだよ」
ムーア「ほえ・・ドシュビシュカシュ・・。すごい派手できれいなお花だね。そんでもってすんごいでかい」
ロージー「とぉ~っても甘い香りがするの♪」クンクン(と幼女の顔を余裕で飲み込むほど巨大な花びらの匂いを嗅いでいる)
エスター「ドスビスカスね。西シュレイドの南にあるココット山の麓一帯は、とっても穏やかな風土の地域なんですって。ドスビスカスはその自然豊かな土地柄が非常によく表れた植物といっても過言ではないわね」クンクン
ムーア「前に授業で習った。ココット村だ」(「よくできました」的な笑顔で褒めてくれるエスター)
エスター「最近ではドスビスカスの種が風にのって各地に花を咲かせていると聞いたけど・・・ロージー、そのお花どうしたの?」
ロージー「病院に来る前にお花屋さんがどうぞって。しょだてる(育てる)と今よりもおっきくなるんだって。この元気に咲(ちゃ)いているお花を見て、病気のちと達(人達)も元気になればいいなって・・だから病院に飾ろうと思って持ってきたの♪」
エスター「・・・・・・・・・・・・・・」スッ・・(笑顔で優しくロージーを抱き寄せる)
ロージー「だから面倒よろちくね♪」ちょん(と、してやったり顔の幼女のおでこを指で触れるエスター)
ムーア「いいなぁ・・・あたちのお家にもたくさんお花は咲いているけど、さぶいから種が飛んできたとしても、きっと「ちっさく」なっちゃうに決まってる」
エスター「そうね・・同じドスビスカスでも、土地によっては大きさも異なるってことね・・」ふむ・・
ロージー「ちいちゃいのも見てみたい!それでね、ブローチにするの♪」
エスター「きっと似合うわ。ありがとう、ロージー。大事に育てるわね」うん!
Recollection No.5_42
ヴィルヘルム「こんな所にいやがったのか。散々探しちまったぜ」(キンババと一緒に部屋に入ってくる)
ムーア「ああ、ごめんごめん。ふたりとも」どうぞ(とナッツの入ったボールを勧める。無造作にガサリと鷲掴み、それを豪快に口に放り込んでは頬張るヴィルヘルム)
キンババ「ドスビスカスじゃないか!前に王都御用達のお花屋さんが外街に立ち寄った時に見せてくれたことがあるんだけど、こっちでも咲くんだね」(と床に置いてあるドスビスカスの鉢を見て感動している)
ムーア「同じこと言ってる」うふふふ(とロージーとエスター)
ヴィルヘルム「花より食いもんがいいぜ。もうすぐランチの時間だ。飯食おうぜ」
キンババ「まったく君の食い意地ときたら、どこに来ても同じだね・・。ロージーはいつもご飯はどうしているんだい?」
ロージー「え・・」
エスター「ああ・・彼女は私達と一緒に食べてるの」
ヴィルヘルム「病院食か。狩人が食ってるっていう携帯食料みたいなもんか」
ロージー「ちちゅれい(失礼)ね。初対面のちと(人)に対して」ぷん
ムーア「初対面?昨日も会ったのに」
エスター「最近、覚えた「自分の中でカッコいい台詞」みたいなの。気にしないで」こそ
キンババ「ロージーはいつも病院にいるの?」
ロージー「・・・しょうじゃないけど・・・・」(と俯いてしまう)
キンババ「??」(不思議そうな顔でこちらを見てくる)
エスター「最近、よく来てくれるのよね。さ、ご飯にしましょうか。病院の食事だからって馬鹿にしてると驚くわよ」(と袖をまくってみせながら一同を促しつつ部屋を退出していく)
ヴィルヘルム「俺様も手伝うぜ。こっちの調味料がどんなのか気になる」ダメ!君はキッチンに入らないで!(とキンババ)
ロージー「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(エスターに背中を押されながらも顔はまだ俯いたままである)
ムーア「ロージー」
ロージー「??」
ムーア「ご飯食べたら、今日はお外で遊ぼうか」
ロージー「・・・・・うん!!」
ぶわつはつはつはつはつはつ♪
(と嘲笑かますヴィルヘルムの如何にも悪ガキっぽい背中の後ろから、隣のロージーと手を繋ぎ、共に軽やかなスキップを踏みながら続いていく)
To Be Continued

★次回ストーリーモードは2/24(月)0時更新予定です★