
ボギャアアアアアアアア!!
(雲海漂う黒鉄の岩ぶすま奥、最も険しくせり上がった尖端の上を浮遊しながら咆哮あげる火竜がこちらに向かってその鋭い敵視を向けている)
ムーア「見下されるって、まさにこのことね」(視点の主が火竜が見える山頂から連なる尾根に立っていることからその位置関係が把握できる)
ボフウウウウウウウウン!!
(目の前に浮かぶ火竜は咆哮の余韻により開かれた火花散る口内より、両翼の躍動と共に隕石のような火球をこちらに向かって放出してくる)
ムーア「ガーード!!」ガイン

ボルルルルルルルルル!!
(視界を遮る刀身の向こう側より、轟々と燃え滾る火の玉が自分を狙って急降下してくる様が、その大気を貫く激しい摩擦音で想像できた瞬間....)
ドガアアアアアアアアン!!
(刀身に凄まじいエネルギーが衝突し、爆発のスパークにより視界など確認出来ぬまま後方に大きく吹っ飛んでいく)
ヒョオオオオオオオオオ・・・
(目を瞑ったまま慣性の法則により全身で風を切っていくのを脳の揺らぎと共に感じる)
ズシャアアアアアアアアン

(おそらく仰向けのまま背中で地面に衝突したのだろう、黒い視界が首ごと激しく揺れる)
ムーア「クッ・・・・・」(薄っすら目を開けるとまつ毛のカーテン越しに眩い太陽光が差してくる)
ヒョオオオオオオオオ!!
(次の瞬間、頭上よりボーンブレイドがその重量に伴った落下速後で、しかも剣先から落下してくる)
ムーア「いっ

ズシャアアアアアアアアン!!
(瞬時に全身を左側方へ回転させると同時に右側からは大剣が地面に突き刺さる「おちょろちい重たく鋭利な音」が聞こえてくる)
ムーア「ひぃ・・ひぃ・・・・

ひぃ・・ひぃ・・・・

ブワッサ・・・ブワッサ・・・
(視界が影に覆われ、明らかに「あいつ」が降臨してきたことを悟ると同時に覚悟を決めたかのようにおもむろに起き上がる)
ゴッゴッゴッゴッゴッ・・(頭上より舞い降りてくる赤い竜を悠々と見上げながら回復薬が入った小瓶を飲み干していく)
ムーア「うい~~~~っ」ぷはぁ~~

アポロン「あ、コラ!!山をお前らの作ったもんで汚すな!!」ズシャーーーーン

ムーア「やだって言ったら?」ズシャッ

アポロン「今度は麓まで叩き落としてやる!」フシューーーー

ムーア「それはこっちの台詞。さ、かかってきなさいな」ちょいちょい

Recollection No.5_65

ちゅんちゅん・・ちゅんちゅん・・
(朧気な視界に青空が広がっている)
ムーア「ひぃ・・ひぃ・・・・

ぬう・・(ニヤニヤと相変わらずモコモコパーマなキンババの顔が太陽を遮りながらこちらを覗いてくる)
キンババ「まったくひどい有様だね。これで何敗めだい?」ピタッと(濡れタオルを額に乗せてくれながら)
ムーア「うっさい・・・」ひぃ・・ひぃ・・

アポロン「今日は頑張った方さ。初めて顔面に一発もらったしな」ちら(憎らしい目で声が聞こえる左側へ首を傾けると、長い首の上に相変わらず山賊のような格好をしたヴィルヘルムを乗せた火竜のでっかい顔面に「ちっさめの切り傷」が。またその背景から麓の平原地帯であることも見て取れる)
ムーア「いつかその「でか黒い」鼻を粉砕してやる」ほら動かないよ(とキンババに首をもとの位置に戻される)
ヴィルヘルム「狩人修行もほどほどにしねぇとな。お前の顔が歪んじまうぞ」ガッハッハッハッハッ(見上げる青空に笑い声だけが聞こえる)
ムーア「ふん。まだまだこれからよ。こんなことになるなら、もっと早くアポロンを見つけておけば良かった」うん。鼻は曲がってないね(とキンババ)
アポロン「同じことさ。むしろ子供の方が、うまく加減が出来ないから、ほんとに殺しちゃってたかもな」ペシペシっ

ムーア「ぎ~~~~~~っ!!」ガジッ

アポロン「ぎゃああああああああああ!!!!!」ブッ

ムーア「油断大敵よ♪」歯も大丈夫みたいだね(とキンババ)
アポロン「人間の雌っていうのは、みんなムーアみたいなのか!?」ふう~ふう~

キンババ「もしそうだとしたら、とっくに人類の男性は女性の奴隷と化しているさ」やれやれ
ヴィルヘルム「シオンもあれはあれで気が強いしな。いつだかもビリーをぶん殴ってただろ?あんな光景、こいつ(ムーア)以外じゃ、はじめて見た」ククッ
キンババ「別に関係ないよ。彼女には彼女の人生がある」ふんだ
ヴィルヘルム「ここだけの話、例の義賊はシオンじゃないかって俺は睨んでいる」
キンババ「君がそう思うなら絶対に違うね。そのせいで僕は危うくパン泥棒の冤罪をかけられそうになったんだから。それにね、彼女は心の綺麗な子なんだ。義賊といっても犯罪行為をしていることには違いない。根が真面目な彼女が盗みを働くわけないだろ?」ふんだ
アポロン「義賊ってなんだ?」
キンババ「イデオロギーと階級社会に属さない、僕ら弱い者の味方。ええと、確か名前は・・・」
ムーア「ねぇ、そんなことよりアポロンは誰か気になる人・・・気になる飛竜の彼女はいないの?」
アポロン「はぁ~?このあたりには俺しかいないからな。アルコリスまで行けば、そりゃ~たくさん雌火竜もいるけど・・・俺はここが気に入っている」(長い首を上げ、遠くを見つめる)
ムーア「そっか・・・あんたもお父さんとお母さんがいるヒンメルンがいいんだ・・・・あたちとおんなじだね」
アポロン「フン」(その発言を横目で聞いていた火竜が口元をほころばせる)
ムーア「ねぇ、アポロン。ずっと前、あたちが神殿のみんなと一緒に森へ採取に行った時、あんたと初めて会った時のこと覚えてる?」
アポロン「う~~~~ん・・・人間がたくさんいて、やたらと「臭い煙」を炊いていたことくらいしか覚えてないなぁ・・」
ムーア「そうそう。それで興奮して火を吹いてきたのよ」え~~~(とキンババ)
アポロン「あ~~~~悪かったよ。さっきも言ったろ?ガキの頃の方が力を制御出来ないんだ。それとも、誰かを傷つけちまったか?」
ムーア「あははは。本当にアポロンは優しいね。大丈夫。みんな無事だったから」
アポロン「ふ~~~~

ムーア「でもね、あの時、まだ小さかったあたちは一瞬だけ記憶を失ったの・・」
アポロン「・・・・・・わりぃ・・」
ムーア「違う違う。逆に感謝してるのよ」
ヴィルヘルム「どういうことだ?」(とアポロンと顔を見合わせる)
ムーア「そのおかげでママに会うことができたから♪」(不思議そうな顔でこちらを見ている火竜のブルーアイにウィンドボブな少女の微笑みが投映されている)
アポロン「??」(再びヴィルヘルムと顔を見合わせながら)
ムーア「でね、アポロンに聞きたいことがあるの」
アポロン「なんだ?」
ムーア「黒い龍・・・・見たことある?」
アポロン「黒・・・・・・さぁ・・・アルコリスでも見たことはないなぁ・・・・」
ヴィルヘルム「図書館の本にも乗ってねぇのか?」
キンババ「少なくとも、この前、借りた本には乗ってないけど・・・どこで聞いたんだい?」
ムーア「ん・・・・ああ・・小さい時に神殿の誰かから聞いたのかも。それで興味があってね。黒い龍なんて珍しいじゃない?」
アポロン「確かにな・・・・気にはなる」う~~ん
キンババ「君、ひょっとして、その黒い龍のことを知りたくてアカデミーに?」
ムーア「まぁね。OK。また何か分かったら教えてちょうだいな」ボキッボキッ

キンババ「あ~~~まだそんなに動いちゃだめだよ

ムーア「平気平気。あたち達、モンスターハンターは人より体が丈夫なの♪」ぶちっ


アポロン「まだハンターとは言えねぇけどな」ビタァ~~ん

キンババ「仕方ないさ。まだ若いんだし。これからだよ」そうそう(と視点の主)
ヴィルヘルム「けどよ、子供でもハンターになった奴がいるって、パパから聞いたことあるぞ」
ムーア「はぁ?なにそれ。そんなわけないじゃない」(周囲を見渡し、新しいキノコを探している様子だ)
ヴィルヘルム「マジらしいぞ。なんつったかな・・・メサ・・メサ・・・メサなんとかの彗星だ。あれ?彗星だったっけかな?わかんだろ?なんでもいいさ」
キンババ「なんだい?それ?伝承の話かい?」
ヴィルヘルム「かもな。ま、世界はまだまだ広いってことよ」ガッハッハッハッハッ
ムーア「あたちの方が絶対強いし。これなんだろう・・」ぶちっ

ヴィルヘルム「そういえばよ、今度、ロイヤルスクールの連中と会うんだって?」
キンババ「へぇ、学校をサボっているくせによく知ってるね」
ヴィルヘルム「シオンから聞いた」
キンババ「・・・・・・あっそ。親睦会だよ。近いうちに王都で開催するって」
ムーア「へぇ・・場所は?」クンクン(黄色いタイプのキノコの匂いを嗅いでいる)
キンババ「王都の礼拝堂。もちろん参加希望者だけ。どうせ君等は興味ないだろ?」
ムーア「スラムの生徒だって、どうせ馬鹿にされるに決まってる」がじっ

キンババ「そういうお互いの偏見をなくす為に交流を図るのさ。君はどうするの?」(と首に跨っているヴィルヘルムを見上げる)
ヴィルヘルム「シオンに誘われたから行くつもりだ」(平然とした顔で)
キンババ「・・・・・・・・・・・・。ま、少なくとも彼女が来るっていうポジティブな方向で考えよう」ブツブツ(そうやって自分を言い聞かせている彼を見つめる視界がなんだか朧気になっていく)
ムーア「いいいいいいいいいいい」ビリビリビリビリ

アポロン「どうした?ムーア」
ムーア「いいいいいいいいいいい」バタァ~~~ん

To Be Continued

★次回ストーリーモードは5/21(木)0時更新予定です★