
ポツポツポツポツポツポツ・・・・
(小雨降る昼過ぎの四番街メインストリート(有り合わせの木材から建てられた簡易住居が「せっまい道」の両脇に立ち並ぶ)の見慣れた光景の中、傘も差さずに練り歩いている)
ガラガラガラガラ・・(せっまい道の向こう側からゴミを山積みにした荷車をひいこらと引いてくる「これまたあやしげな」レザーシリーズやらチェーンシリーズやらごちゃまぜその場しのぎな装備を身に纏った褐色肌の地元民男性が)
ムーア「あれ?あんたのお父さんじゃない?」(左を向くと「げっ

ナジャロ「悪ガキどもじゃねぇか。揃いも揃って、王都に襲撃でも仕掛けるつもりかぁ?」ガラガラガラ・・
キンババ「そんなことするわけないだろ

シオン「ごきげんよう。おじさん」(視界の右側より彼女が一歩前に踏み出しながら挨拶かます)
ナジャロ「よぉ、シオン。キャッスルでの生活は順調か?」
シオン「ええ。なんとかね」
ムーア「ほんとにお城みたいな家だと思うけど」ぼそっ
ゴスッ

ムーア「うぷっ

ナジャロ「なんだ?ムーア。どうせまた、へんなもんでも食ったんだろ?」クスクス(笑うシオン)
ニッキー「ご苦労さま。いいもの見つかった?」(とゴミだらけの荷車をさも興味ある感じで覗く)
ナジャロ「ここんところ、さっぱりだ」はふ~~

ヴィルヘルム「でもよ、昔からおじさんがゴミ集めをしてくれるから、この外街はきれいなんだぜ?感染症も少なくなったしな。うちのパパも感心してたよ」
ニッキー「ナジャロおじさんを見習って、バールボーン家が正式に外街用の清掃員を雇用するって話、どうなった?」
ヴィルヘルム「ああ。正式に決定したよ。俺の発案ってことで通った」えっへん
ナジャロ「おかげで助かってるよ。本当に・・感謝してるよ。お前たちには」しししし(と鼻下を擦りながら)
シオン「私達はおじさんを参考に提案しただけ。結果としておじさんの努力が報われたのよ」
キンババ「これで正式にゴミ漁りも出来るしね」やれやれ
ムーア「いつか、ちゃんとした双眼鏡を手に入れたら、ちゃんと買ってあげるから」
シオン「ハハハハハハ。そりゃいい。(キンババを見ながら)こいつと、お前達二人(シオンと視点の主を指差しながら)のどっちかが、いつか王都の礼拝堂で結婚式を挙げれるように今から貯金も出来るしな」
ムーア「こっちはないない。あるのはそっち」(とシオンを指差す)
キンババ「えっ

シオン「冗談でしょ?おじさんの仕事を邪魔しちゃいけないわ。行きましょう」(促され、共に歩きだす)
ヴィルヘルム「簡単にはぐらかされたな」こそっ(と、あからさまに落胆しているキンババの耳元で)
ナジャロ「あ~~~そうだ、ムーア」
ムーア「ほえ?」
ナジャロ「お前、「ウブ」なんて渾名で呼ばれたことあるか?」
ムーア「はえ・・うぶ・・?」はて・・
ナジャロ「やっぱりな・・・・ほら、ヴィルヘルム。お前のうちに最近、気に入られてる胡散くせぇ祈祷師がいるだろ?竜人の婆さん」
ヴィルヘルム「ああ。胡散臭くはないけどな。将来的には「銅像を作る方向」で固まってるけど・・どうかした?」
ナジャロ「いやな、この前、あの婆さんの方から俺に話し掛けてきてよ。「お前さんの息子の友達に蒼い髪をした娘がおるじゃろ?また外街に戻ってきたようじゃな」なんておかしなこと言いやがるからよ、「彼女はずっと外街の学園に通ってるぜ?誰かと勘違いしてるんじゃねぇか?」って言ったんだ」
ムーア「そしたら?」
ナジャロ「急に怒り出しやがってよ。「間違いない、ありゃウブじゃ。ニャ・モンドのマスターに聞いてみろ!!」って捨て台詞残して去っていったんだ」
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・」(何か思い当たるように顎に手をもっていき考え込む)
キンババ「ニャ・モンド・・?」
ナジャロ「お前達が生まれる前の話さ。この先に獣人が経営するアンティークショップがあるだろ?そこが昔は喫茶店だったんだ」
シオン「へぇ~素敵じゃない」
ナジャロ「だろ?俺も昔、母さんと何度か通ったことがあるんだが、その店の「メラルーのマスター」が作るパイが最高級に上手くてな・・・・普段は俺のジョークじゃ、くすりとも笑わねぇあいつが、あのパイを食った時だけは、見たこともねぇ笑顔を見せたんだよ・・・・はぁ・・・・」しょんげり
ヴィルヘルム「出ていったお前の母ちゃんとの淡い思い出だな。可愛そうに」はぁ~~(とキンババ)
キンババ「人違いじゃない?その祈祷師って、もう後期高齢者なんだろ?」
ヴィルヘルム「オヨネさんをバカするな!!誰にでも人違いはある!!」ぷいっ(と、懐から、そのオヨネさんという怪しい祈祷師から「買わされた」と思われる例の水晶ドクロを取り出して頭をスリスリと撫でている)
キンババ「でも外街に蒼い髪をした子なんて、他にはいないし・・・」
ナジャロ「ほらよ、竜人ってのは長生きだろ?おおかた、大昔にどこぞの街で見た人間と間違えたのさ。お前もあんまりあの婆さんを信用しない方がいいぞ」フン(とヴィルヘルム。ナジャロは荷車を引いていく)
ムーア「待って、おじさん。そのニャ・モンドっていう喫茶店・・・メラルーのマスターがいたのは確かなんだよね?」
ナジャロ「ああ。年老いてボケちまったが、紅茶とパイの腕はピカイチだった。急に店じまいしちまってな。何処に行っちまったか・・・ま、今はもう生きてはいないと思うがな・・。それがどうした?」
ムーア「うううん。ありがとう。お仕事、がんばって」
ナジャロ「おう。お前らもな」
ガラガラガラガラ・・・(小雨の中、ゴミだらけの荷車を引いていくナジャロを見つめながら、心では違うものを捉えている)
Recollection No.5_83
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・」ガラガラガラガラ・・・・
シオン「人違い・・・ねぇ・・・」(と、こちらに問いかけるように見つめてくる)
ニッキー「確かに都市では珍しくはないが・・・・なぁ、ムーア。もしかしたら、その婆さんが間違えた相手というのは、君の・・・・」
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・」こくり
シオン「何か心当たりがあるのね?」
ムーア「小さい頃・・・よくおトキさんにお母さんの話を聞いていたんだけど、お母さんは生まれてにすぐに両親を亡くしてしまって、お母さんは外街で育てられたって・・・そこでお母さんの育ての親となってくれたのが、当時、外街に住んでいたメラルーの人で、お母さんはその人に料理を教えてもらったらしいの。おトキさんと板長は、その人のことを「マスター」って呼んでた・・・」
キンババ「じゃあ、お父さんが言ってた「メラルーのマスター」っていう人が・・・」
シオン「断定するのは早いわ。他に何か聞いていないの?」
ムーア「お母さんが神殿で暮らすようになって間もなく、お母さんがそのマスターを呼び寄せて、少しの間だけ一緒に暮らしていた時期もあったみたい。板長は、その時にお母さんとマスターから、秘伝のあんまん作りを教えてもらったんだって・・」
キンババ「そっか・・君があんまん好きなのは、お母さんの味だからだったんだね」こくり・・(静かに頷く視点の主)
ニッキー「ナジャロのおやじさんが言っていたメラルーのマスターと同一人物で決まりだな。その後、マスターは?」
ムーア「あたちが生まれる直前に死んじゃったらしいの・・・板長は入れ違いで生まれたあたちをマスターの生まれ変わりかもしれないって・・・ありがたい事だって言っていたのを覚えている・・」
ニッキー「残念だ・・・そのマスターに聞けば、もっと母上の話を聞けただろうに・・・」
シオン「がっかりするのはまだ早いわよ。これから行くアンティークショップは元々、そのマスターが運営していた喫茶店だっておじさんが言ってたじゃない。私達の目的は、そのアンティークショップの店主からヒントを貰うことなんだし。ジェイソン・ウーの手紙。追伸の意味がようやく分かったわ」
ムーア「ジェイソン・クソ・ウーめ・・・それを知っていて、わざとNyaNya堂にあたちを行くように仕向けたのか・・!」
ヴィルヘルム「まるで手のひらで踊らされてるみたいだな。Obey your master。うちのパパが寝言でよく呟いてらぁ~」
シオン「けど、運命は抗うものよ。ジェイソン・ウーがあなたに興味を持っているのは確か。見返してやりましょう。あなたには自分のルーツを知る権利があるんだから」
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・」こくり
ヴィルヘルム「そうと決まったら突撃だ!!おりゃああああああ!!」
ダッダッダッダッダッダッ

ずでぇ~~~~~~~~ん

バシャ~~~~~~~~

シャアアアアアアアア

(ヴィルヘルムは感極まり突っ走るも雨に濡れた泥濘道に足をとられ豪快に転び、顎から地面に倒れた勢いそのままに「頭からのスライディング方式」で近くのボロ小屋を大破しながら突っ込んでいくと、怒り狂ったその家主であろうアイルー科の住民に顔をおもいっきり引っかかれる)
ムーア「雨が強くなってきた。急ごう」シャアアアアア


To Be Continued

★次回ストーリーモードは7/23(木)0時更新予定です★