
はぁ・・はぁ・・・(息を切らせながら雨上がりの王都を千鳥足で歩いていく視点主を物珍しそう見つめてくる通りすがりの市民たち)
ちら・・(左側を見ると、互いに体を支え合いながら歩いている満身創痍のヴィルヘルム(未だ止まらない鼻血を左手で懸命におさえているのだが、指の隙間からボタボタと流血している)の姿が)
ムーア「ほらみなさい・・意地張らないで検問所から応急薬を貰えば良かったのに」はぁ・・はぁ・・

ヴィルヘルム「そう言うお前こそ、今にも倒れそうじゃねぇか・・」ボタボタ・・
ムーア「あたちは普段からアポロンを相手にしているのよ?あんたの攻撃くらい・・・うぷっ・・

ヴィルヘルム「ククク・・・そうやって、あたち、あたち・・言ってろ。そん時のお前が一番だ・・。卒業してから、前のように山を降りてこなくなった罰を俺様が与えてやったと思って・・・・・・・・・・・」ガクン(視点主に腰を支えられながら、「立ったまま」一乙状態に)
ムーア「ちょっと



キンババ「二人共どうしたんだい!?その姿

ムーア「原点回帰。出逢った頃のように拳じゃないと分かり合えない仲なのよ・・・って、薬草かなんか持ってない?」ドサッ

キンババ「君も彼も社会学的観点からみれば同じ出自で同じ属性ってことさ。こりゃまたひどくやられたもんだね」聞け・・・今回は・・俺様の勝利・・・・・うっ・・(譫言と共に再び意識を失うヴィルヘルムを介抱しながら)
ムーア「それって嫌味?あのね、あたちはアスクリプションを超越したアチーブメントを獲得していくのが目標でもあるの。別に人身御供的な境遇だって自虐してるわけじゃないのよ?信じたくもない決して公にすることができないクソみたいな帰属的身分を受け入れようと必死なの。分かる?運命に寛容なのよ、あたちは」ドスン

キンババ「分かってるさ。君は立派だよ。お爺さんが残した負の遺産に苦しんだお父さんに代わって、君はロザリー家が歩んできた歴史を因果的推論によって、その帰属の仕組みを自らの生き様を通して紐解こうとしているんだからね。よぉ~し、いい子だ」うう・・・(ヴィルヘルムの鼻を中心に手持ちの薬草を擦りつけている)
ムーア「負の遺産とはずいぶん聞こえがいいわね。いいのよ?暴虐の血筋って言っても」
キンババ「少なくとも君のお父さんは信義を貫き、デーモン・ロザリーが大陸に与えた悪徳なダメージを少しでも回復させようと、できることから始めた。そして今、その志を君が受け継いでいるんだろ?ほら、動かないで」俺は・・勝ったんだ・・・
ムーア「・・・・あんた、ロザリー家の論文でも書くつもり?ってか・・・ありがとう」コチン(キンババとは目を合わせず、拳を突き合わせる)
キンババ「もし君がアカデミーを出禁になっていなければ、今頃、優秀な哲学者になっているかもね。って、未来を否定しちゃいけないな。まだ君は若いんだ。まだまだなんとでもなるよ」
ムーア「あんたもね。・・・・プッ・・・」あははははは
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤ・・・
(噴水広場から見える王都の街並みは、その灰色の空模様に反し、いつも通り活気に満ちている)
キンババ「ああ、そうだ。依頼を受けていた黒龍伝説に纏わる文献の調査報告。残念だけど書庫にあるのは、まぼろしの書の複製ばかり。数多の飛竜を駆遂せし時、伝説はよみがえらん・・・もう見飽きたよ・・・」ふぁ~~~~あ・・(と、あくびをしながら、視点主の横(つまり仰向けに寝ているヴィルヘルムの腹の上)に腰を下ろす)
ムーア「でもさ、それって、誰が広めたの?亡国の災厄を目撃した人?でも生き残りはいないとされているし。ってことは、邪龍教の経文?それを各地の子供たちに広めて、童歌に?黒龍の存在を後世に伝える為?」
キンババ「中立地帯となっている旧シュレイド城跡地は、狩猟フィールド扱いになっているらしいね。そこで黒龍と狩猟ができるって、各都市のハンター達は賑わっているって」
ムーア「そういう話聞くたびに、モンスターハンターになるのってどうなんだろうって思うようになってきた。クソ爺が乗っ取った、旧シュレイド王国を滅ぼした黒龍は、そんなレベルじゃない・・・きっと黒龍伝説で語っている黒龍こそ、本物よ」
キンババ「亡国を一夜にして・・・・・ああ、駄目だ。これじゃ終末信仰の彼らと変わりない」
ムーア「ウー家を・・あいつを影で操っていた・・邪龍教・・・・」
キンババ「その「本物」を一神教にしているのなら、彼らに居場所を聞くのが一番早いかも」
ムーア「相手は強大な組織よ?下手に干渉すれば、王都に・・プリムに迷惑が掛かる」
キンババ「彼女から何か聞いてないのかい?」
ムーア「異教徒信仰ってだけで捕縛できないでしょ?そもそも誰が信者かも分からないし、王都には外街だってあるんだから」
キンババ「顧問団に関係する名家をあたるのが一番だと思うけど・・・報復を考えると確かに下手に捜索はできない相手だね」はぁ~~~
カタカタカタカタ・・・・・ヒヒィ~~~~ン・・・
(通りの向こう側に一台の馬車が人混みを無視しながらおもむろに停車する)
ムーア「あっぶな。どこのバカ?」ササッ・・・(見つめる停車した馬車の側方に御者が慌てて回り込み、ドアの前に「ちっさめの階段」を立てかける)
ガチャリ・・・トットットットッ・・・(ドアが開かれ、中から威風漂うバロック様式な黒のロングコートを羽織った中肉中背の見るからに王都の貴族が優雅に降りてくる)
ムーア「前言撤回。シオンのお父さんだ」
キンババ「いや、君の見解が正しい」コッッコッコッコッコッ・・(高貴さを強要させるブーツの音をレンガ敷きの噴水広場に響かせながら一直線にこちらへ向かってくるプラウズ家の当主)
ムーア「どうする?こいつ(ヴィルヘルム)置いて逃げる?」トットットットットットッ・・
キンババ「遅かれ早かれ、いつか対峙しなきゃならないんだ。様子を見てみようじゃないか」(珍しくその目つきは鴉のように鋭く、こちらへ向かってくる名家の当主を睨みつけている)
シオンの父「・・・・・・・・・・・・・・・」タッ・・(少し距離を置いた所で立ち止まり、こちらを物色するかのように眉を潜めながら見下ろしている)
ムーア「なにか用?ムッシュ・・・」
シオンの父「プラウズだ。ジルベール・プラウズ」ふむ・・(純白のハンケチで口を覆いながら)
キンババ「これはプラウズ伯。ご安心を。外街市民が感染症に侵されているというのはもっぱらの噂。何か御用ですか?」
ジルベール「君らの下で横たわっているのは?」
キンババ「転んで流血しただけです。奇病ではありません」フッ・・
ジルベール「ふむ・・・・キャロルムーアというのは・・・君かね?」(ハンケチそのままに)
ムーア「ああ?そうだけど」ボリボリ(あったま掻きむしりながら)
ジルベール「聞いた話では、君は・・私の娘・・・シオンと交流があったとか?」
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(一瞬だけ隣のキンババに目を向けると、彼は小さく頷いてみせる)
ジルベール「どうなんだね?」(ハンケチ越しに鼻をつまみながら)
ムーア「オーロラ学園とロイヤルアカデミーの親睦会で。深い関係性はないけど?どうして?」
ジルベール「・・・君とシオンが外街で一緒にいたという目撃談を聞いてね・・・ほら、ご覧の通り、今では外街市民が自由に王都を出入りをできるようになったろ?酒場で酔いつぶれていたという外街の酔っぱらいから証言を得た。そうだな!?」はい(と、後ろに侍る御者が)
ムーア「薬中の酔っぱらいなんて外街には腐るほどいるわ。見間違えたんじゃない?外街にだって黒髪の女の子はたくさんいるし。吹っかけられたのよ。プラウズ家に悪評を与えようって」ククク(と、賛同してみせるキンババ)
キンババ「お嬢さんに何か問題でも?」
ジルベール「・・・・いや。もう結構だ。失礼する」クルッ
ドンッ

(プラウズ伯が振り返った瞬間、突然、「四足走行」で走ってきたメラルーが伯爵に衝突するやいなや、そのまま猪突猛進で消え去っていく)
ジルベール「クソネコめっ!!どこを見て・・・・・・・・・・コホン・・・・まったく。女王陛下はなぜ、このような無法者達を野放しにしているのか」
キンババ「僕らもアウトローだと?」フンッ(と、プラウズ伯)
ムーア「んなことより、財布を確認してみたら?」ハッ

ジルベール「衛兵!!今の下等な食雑目を見たろ!?とっとと捕まえんか!!」バタン

ムーア「聞いていた以上の」
キンババ「クソオヤジだね」うう・・重たい・・・ポポが俺を・・踏みつける・・(と昏睡状態のヴィルヘルム)
Recollection No.5_132
プリム「まぁ。それで伯爵の被害は?」(いつものバルコニーテラスにて。対面の席で「目をまあるく」している若き女王陛下(今日はそのドラグライトカラーなロングヘアーをケルト風のオシャレ編みこみに。ドレスは各縁やフリルが純白のエメラルドグリーンのロングドレス)の姿が)
キンババ「さぁね。彼にしてみればはした金だろ?」ズズズズ(視点主から見て右側の席より怒り心頭気味にお紅茶を)
ムーア「そうそう。あたちらの関係性もバレてないし、自業自得よ」ズズズズ(とお紅茶を飲む視界の先に映る宮殿の回廊奥より、顔をグルグル包帯巻きにしたヴィルヘルムと、そんな彼を介抱するように付き添う今日もエレガントなアドニスが姿を見せてくる)
プリム「まぁ・・・会合で何か問題でも?」いちちち・・(と、こちらへ歩いてくるヴィルヘルムに)
ヴィルヘルム「工事の件は順調だ。問題はこいつ」ドサッ

ムーア「あんたが先に吹っかけてきたんでしょうが」ふん
ヴィルヘルム「俺はプリムに代わって意見しただけだ」ふん
プリム「それで喧嘩に?」
キンババ「そうそう。体で発散できる君等が羨ましいよ」ズズズズ
ヴィルヘルム「うるせぇぞ。お前の方こそ、シオンの親父さんに一泡吹かせてやるくらいの度胸を持て」ふん
キンババ「無意味な腹いせをしたって意味がない。だからって、あのメラルーを称賛したりもしない」ズズズズ
プリム「獣人による軽犯罪が都内で増加しているのは事実です。警戒を強める一方で・・」
ヴィルヘルム「わかってる。元を叩けばいいのさ」カチャリ・・(彼にも皆と同じお紅茶を差し出すアドニス)
ムーア「内を快く思っていない反乱分子・・・・」
ヴィルヘルム「よせ!スラムの老いぼれ酔狂の戯言をいちいち信用してたらきりがねぇぞ!」ごっくん

ムーア「それがバールボーンの本音?外街の人間だって同じ王都の民なのよ?」あちぃ~~~~

ヴィルヘルム「属性を見極めて取り扱う必要がある!それともお前は、金で意見をコロコロと変える、あの老いぼれのような連中を議会に立たせようっていうのか!?」ダンッ

ムーア「気に入らないなら排除すれば!?うちのクソジジイみたいにね!!」ダンッ

フウ・・フウ・・・・

アドニス「ひとつ提案が」かちゃりこちょり・・(一連のやり取りで倒れたテーブル上のティーカップを片付けながら)
プリム「なんでしょう?」
アドニス「どうやら御三方は、それぞれ鬱憤がお溜まりのようで・・・・どうでしょう?ここでひとつの目標を共に心を今一度、ひとつにするというのは?」かちゃりこちょり(下を向きニヒルな笑みを浮かべながら)
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・??」フゥ・・フゥ・・・(興奮冷めやらぬまま、同じくキョトンとしている一同の顔色を窺ったり。そしてそんな光景を尻目に淡々とお片付けをしているアドニスの美顔も)
To Be Continued

★次回ストーリーモードは1/28(木)0時更新予定です★