ホわわわわぁ~~~~~~~~
(頭上を浮遊する光蟲の明かりに照らされながら、ぼうっと天井の黒い滲みを見上げている)
シセ「で、現場に都合よく現れた俺が怪しいと思ったのか?」ぬう(その視界の脇からこちらを覗き込むように腕を組んだ彼が見下ろしてくることから視点主が床に体育座りでもしていることが窺える)
ムーア「うん・・・タイミングが良すぎたのかも・・」ぽりぽり(目を伏せ、誤魔化すように頭をかいてみせる)
シセ「前にも説明したろ?下水道から怪しい男が出てきたから、調査に行った。そしたらお前がいた」
ムーア「・・・・・・ほんとにそんな人を見たの?」(俯きながら上目遣いで彼を見つめる)
シセ「はぁ・・・俺を疑う気持ちは分かるが、お前とはもう何年もの付き合いだ。俺がお前に何を隠そうっていうんだ?」やれやれ
ムーア「・・・におい・・・・・」
シセ「??」
ムーア「オヨネさんの死因と同じ毒薬の香りが・・・シセからしたって・・」
シセ「・・・・ボワコフがそう言ったのか?」(見上げるシセの表情が途端に険しくなる)
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(目を反らし俯く)
シセ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」フゥーーー・・
ムーア「答えて。オヨネさんを殺したのはあなたなの?」(再び顔を上げこちらを見つめるシセに問いかける)
シセ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ムーア「やっぱり・・・口封じの為にボワコフさんを襲ったのね!?」ガバッ!!(立ち上がりシセの胸ぐらを掴み上げる)
シセ「そんなことするわけないだろ!!落ち着け!!」グッ(彼の右手によって左手首を掴まれる)
ムーア「ボワコフさんを消す為に彼の故郷がどこにあるか聞いていたんだ!!手紙やフウロウもあんたが証拠隠滅の為に消したんでしょう!?」グッ!!グッ!!(手を振りほどこうと抵抗するもしっかり手首は彼の力強い右手によってロックされている)
シセ「思い過ごしだ!!本当に俺が何かをしたとすれば神殿のみんなに俺のアリバイを聞けばいい!!俺がずっと神殿にいたのはお前だって知っているだろ!?」グッ!!グッ!!
ムーア「教えて!!オヨネさんをどうして殺したの!?」グンッ!!(薙ぎ払うように手を振りほどく)
シセ「・・・・・・はぁ・・はぁ・・・・・・。彼女に脅迫されていた」
ムーア「・・・・・脅迫・・?」はぁ・・はぁ・・
シセ「彼女は・・・俺の育ての親だったんだ」
ムーア「・・・・・・・オヨネさんが・・」
シセ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」フーーーーー・・(深く息を吐きながら、その場にあぐらをかいて座り込む)
ムーア「本当のご両親は・・?」
シセ「母親は、俺と、俺の父親が見ている目の前で殺され、父は、まだ幼かった俺を知己の間柄であったオヨネさんのもとに預け、それ以来、消息不明のままだ」
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
シセ「クソみたいな話だろ?この話をしたのはお前がはじめてだよ」トントン(と、床を指で叩きながら、視点主にも座れと急かしてくる)
ムーア「・・・・ごめん・・。なんて言えば・・・その・・・」スッ・・(視点主もまた彼と向き合うようにあぐらをかいて座る)
シセ「よせよ。同情の言葉なんて探さなくてもいい。なぁに。外街じゃよくある話さ」
ムーア「え・・・シセはシュレイド生まれじゃないって言ってたけど・・?」
シセ「ああ。外街で生まれた」
ムーア「・・・じゃあ、オヨネさんとはずっと一緒に外街で?」
シセ「いや。両親を失ってからは彼女に連れられ、東側に移住した」
ムーア「どうして神殿に?」
シセ「エスターを覚えているか?」
ムーア「もちろんだよ。大好きだった。確か二人は・・えっと・・・なんだっけ・・あやしげな狩猟啓蒙思想のコミュニティ・・・」
シセ「ハハ。そうだ。彼女とはHonor and Obligation of Noble Hunter(高潔な狩人の名誉と義務)を通じて知り合った。そして同盟が同志を内密に募集しているという噂もな」
ムーア「ウー家・・・・そっか・・。あいつがルチアに頼まれてサロンに噂を・・・。それでエスターと一緒に神殿に来たのね?」
シセ「俺はこんな荒んだ過去を持つ人間だからな。よくいるハンター気取りの流れ者と称して、あとは頼りがいのあるエスターの推薦頼みだったってわけさ」フッ・・
ムーア「神殿には何を求めてきたの?」
シセ「盟主らしい質問だな。当時の面接官が「酔っ払ったルチア」じゃなくて、お前だったら、俺は今、ここにいないかもな」
ムーア「真面目な質問」
シセ「生きがいを探していた・・・・といえば聞こえはいいが、実際のところは育ての親を養う生活に飽き飽きしていたんだ。若気の至りってやつだよ」やれやれ
ムーア「・・・・そっか・・・小さい頃から働かされていたのね?」
シセ「彼女に罪はない。突然、訳ありの子供を預けられたんだ。それに彼女からは、狡猾に生き抜く術をたくさん教えてもらった。そういう意味では本当に感謝しているよ・・・」
ムーア「・・・・オヨネさんと何があったの?」
シセ「ああ・・・俺が同盟に参加したいと彼女に素直な気持ちを伝えた時、てっきり稼ぎ頭である俺が出ていくことに反対してくると思った。だが、以外にも彼女はヒンメルン行きを許してくれた」
ムーア「??」
シセ「同盟に加わった、本当の理由・・・・なぜなら、俺の父親もまた白装束を身に纏っていたからだ」
ムーア「!!」
Recollection No.5_167
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(乾いた倉庫内に沈黙が走る中、おもむろに立ち上がったシセは、そのままゆっくりとワインボトルがたくさん「突き刺さっている」木製棚に近づき、適当にそれらを吟味しながら一本抜き取る)
シセ「お前もやるか?」スポ~~~ん(爽快にコルクを抜く)
ムーア「・・・・シセのお父さんが・・・同盟のメンバーだった・・・?」(眉間にしわを寄せる視界の対面にワインボトルを直飲みしたシセが再びあぐらをかいて座り込む)
シセ「東側に行くまで、俺は母親と一緒に外街で暮らしていた。父さんは一緒に暮らしてはいなかったが、よく俺と母さんに会いに来てくれた。外街では当たり前の訳あり家庭だと、子供ながらに感じいた」ゴクッ・・(ワインボトルに口をつけて飲む)
ムーア「両親のことが好きだったのね?」(口を拭いながら小さく頷くシセ)
シセ「当時の外街には教育施設もなかったからな。両親が俺の生きる教材でもあった。弓術は父さんから習ったんだ」
ムーア「だから弓が得意なんだ。お父さんはシセに会いに来る時も・・・神殿の白い服を?」
シセ「ああ。父さんは世間に知れている狩猟団とは違う、もっと崇高な目標を抱いた仲間達と一緒に修行に励んでいると言っていた。俺はそんな父さんをどこか誇りに感じ、また、自分もまた、父さんが着ていた白いコートに憧憬を抱くようになっていた。いつか自分も父さんと一緒に武芸の稽古に励みたいと・・・」ギュッ・・(自身が纏っているそのコートの胸元を握りしめる)
ムーア「お母さんは何も言わなかったの?」
シセ「気丈な人だった。生活費は父さんが来るたびに僅かだが貰っていたしな。俺も母さんもそれで十分だった。だから決して俺も母さんも父さんの悪口は言わなかったよ」ゴクッ・・
ムーア「お母さんは・・どうして?」
シセ「・・・忘れもしない夜だ・・。ボロ小屋ワンルームの中で、拾ってきた「歴戦の」毛皮のラグの上で、いつものように母親と寝そべりながら、なんてことのない話をして眠りにつこうとしていた。ふと天井を見上げると、風通しの良い天井の隙間から満月が見え隠れしているのに気づいたんだ。同時に、その隙間の「上」から、同じくこちらを覗き見ている「眼」と目が合った」
ムーア「え・・」
シセ「次の瞬間、屋根に張り付いていた男が、屋根の板を引っ剥がして中に飛び降りてきた。立派な羽根付き帽を被り、見るからに高貴な衣装に身を包んだその男は、躊躇なく寝ながら驚愕している俺の母親の身柄を拘束し、父親はどこにいるか聞いてきたんだ」
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
シセ「ここにはいないと母さんが慌てて答えると、男は人質になってもらうと言い出し、母さんを連れ去ろうした。俺は怯えながらも男に飛びかかったが、あっさり足蹴りにされ、壁に激突の有様だ」
ムーア「仕方ないよ。それで?」
シセ「一瞬、気を失いかけた。だが、次の瞬間、目を開けると、ドアを開けた父さんの姿が目に入った。やったぞ。これで母さんも助かるってな。だが、それは甘い考えだった」ゴクッ・・
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
シセ「父さんは母さんを離せと男に言ったが、男は言うことは聞かず・・・・・・」
ムーア「争いになったの?」
シセ「男は俺たちの見ている前で・・・・・母さんの首を剣で切ったんだ」
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
シセ「激昂した父さんは男に飛びかかり、格闘になった・・。武器を所持していなかった父さんは斬られながらも男の首を締め上げ、迷いなく殺した。俺は母さんのもとに駆け寄ろうとした。だが、父さんに抱かれ、家の外に連れ出された。父さんは玄関先に投げ捨てていた松明を手に取ると、それを家の中に放り投げたんだ・・・まるで母さんを弔うように・・・・」(自然とシセの目元から涙が零れ落ちる)
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ぎゅっ・・(身を乗り出し、そっとシセの両手を握る)
シセ「その行為が後になって、一家心中に見せかける為の偽装だと気づいた。父さんは狙われたいたんだ・・・・・ギルドナイトに・・・・」(俯き、涙をこぼしながら語る)
ムーア「・・ギルド・・ナイト・・・・」
シセ「父さんはその男をそう呼んでいた。また、その男もまた、父さんのことを「かつてのナンバー2」と呼んでいた・・・・その時、分かったんだ・・。俺の父さんもまた、ギルドナイトで、母さんはその紛争に巻き込まれて殺されてしまったんだと・・・・・」
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
シセ「そして俺達が父さんの家族であることを、そのギルドナイトに密告した人物こそ・・・オヨネだったんだ・・!!」
ムーア「!!」
To Be Continued

★次回ストーリーモードは5/31(月)0時更新予定です★