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Channel: あたちのモンハン日記
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Recollection No.2_19

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舞台上に燃え広がる炎から緋色のプロミネンスが迸る。


「紅・・・そして黒・・」


慌てふためく観衆越しに映るステージエリアの出入り口に焦点を絞ると、そこには既に女商人の姿はなく、半開きになったドアの向こう側から死臭を嗅ぎつけたスカベンジャーのように我先にとエリアインしてくるギルドナイト達の姿があった。


「逃したか」


私はしてやられたと言わんばかりに不思議と微笑んでいた。仲間をみすみすと殺害され、そしてまた自分もまた窮地にあるにも関わらずだ。そして悔しいかな、このアンモラルなパーソナリティこそが私の本性なのだろう。


侵入してきたギルドナイト達は、生き残っている同志達と激しい死闘を繰り広げていく。


招待客である貴族達はすきを見て一目散に逃げようとするも、それを逃さんとするナイト達が放つボウガンと弓の無差別な連発連射により、次々と討たれていく。


ギルドは口封じをするつもりらしい。


そうか・・・さっき見えた祖なる者の幻影は彼等の魂が呼び寄せたか・・


「まるでラグナロクの再現・・古塔での仕返しをする準備が整ったようね」


舞台上のギルドナイト達に向かって冷ややかな視線を投げ飛ばすと彼らは一斉になって飛びかかってきた。


「首級を挙げるのは誰!?私はここよ!!」


ドラゴンエレメンタル漲るミラアンセスライドを360度に振り回し、上手から下手から襲撃してくるナイト達を振り払う!


「まるで東方武侠小説を原作にした舞台ね。でも残念。今回は一応、歌劇なの」


スイングの旋回余韻を利用してミラアンセスライドのボディを右足で蹴り上げ、唄口を自分の顔に向ける。


「さぁ!!踊りなさい!!デカダンスの舞踏会を開演するわよ!!」


憤激のブレスは狩猟笛という増幅回路を通し、けたたましいハイトレブルな高温域に最大限までに中音域を押し潰した重厚かつ硬質な低音域から構成された疾風怒濤のディストーションサウンドとなって再びステージエリアを破壊せんばかりに鳴り響く!!


私を中心に放射線状に強烈な音撃波が繰り出され、舞台上のギルドナイト達を尽く吹き飛ばしていく。


「プリマドンナは一人で十分!!」


息を大きく吸い込み、ゲインアップの猛息吹を注入し、よりブーストされた歪みの旋律によってエリア内の同志諸君の力を覚醒させていく!


「怖れるな!!我らには伝説の白龍娘がついておられるぞ!!」


古参の同志が脇差を振りかざし、迫りくるナイトをたたっ斬る。


飛び散る血飛沫に一滴入魂された同志達が怒号をあげながら後に続くも、その非力な脇差を見て気づく。


しまった。彼らは丸腰に近いのだ。


それに比べ、ナイツは準備万端の「対人用」の殺戮兵器を携え、この場に挑んできている。


いくら援護しようとも分が悪すぎる・・。


得物を持たない同志達が悲鳴をあげる間もなく倒れていく・・・


崩れ落ちながら死の一歩手前でこちらを顧みる同志達の目には忠義と大義の懇願が込められていた・・・・


私は狩猟笛を奏でつつ、志を共に暮らしてきた仲間が次から次へと散っていく様を涙ながらの横目で見届けながら、その失った一つ一つの命の名前を頭の中で叫びあげ、然と脳裏に刻んでいく・・!!


最後の一人が私の名前を吠えあげながら倒れていく・・・


差し伸べたその手から、まだ温かい血の塊が舞台上の私に向かって投げかけられ、想いを託しながら白いドレスの表面で弾け散る・・・・


「同志諸君のクエスト!!確かに承った!!」


哀悼の意を狩猟笛に込めて旋律の哭礼を奏でる。


溢れ出て止まない鎮魂の涙を振り切るように回転し、舞台上に視点を戻す・・・


すると下手の舞台裏から眠らされたと思われるバーニーを背中に担いだジェイミーが、背中を向けながら、アクラの牙獣の如く凍てついた狼顧の相をもってこちらの様子を窺っている。


「逃がすかぁあああああああああ!!!!!」


強襲してくるナイト達には目もくれず、それらの命もまた顧みず、狩猟笛でバッタバッタと斬り捨てながら下手側に進んでいく私。


ジェイミーも息子を背負いながら瞬時に逃げることは不可能と悟ったのか、さすがに剣呑な表情を浮かべる。


「バーニーにどう言い訳するのか楽しみだわ」


ミラアンセスライドの「ヘッド」に突き刺さったナイトの遺体を不義不忠の裏切り者に向かって投げ飛ばす。


だが次の瞬間、一直線に飛んでいったナイトの遺体が何者かによってこちらに蹴り返されてきた!


それをミラアンセスライドで軽くはたき落とし、眼の前に出現した新手を確認する。


思った通りだ。


灼火を隔てた向こう側・・


私とバーニーの関係を断ち切るように二人の間に立ち塞がる黒衣の女。


「さぁ、今のうちに。デーモン・ロザリー」


その女が発した思いがけない忌まわしい名を耳にした私は、不覚にも眉を潜めてしまった。


女はその一瞬を見越していたかのようにケムリ玉を床に叩きつける。


ジェイミー・ブラントが・・かの暴君、デーモン・ロザリー!?


「だとすればバーニーは・・バーニーは・・・誰・・?」


困惑が広がる煙幕に飲まれていき、真相を覆い尽くしていく・・


答えを求めぬ刃が霧を裂くように振りかざされるも、もはやギルドナイトなど歯牙にもかけなかった。


決死の覚悟で向かってくるナイトをミラアンセスライドのボディで何人か覚えていないがその頭をすべて叩き潰してやった。


恐惶など知らぬウジ虫のように四方八方より這い出てくる刺客達を尻目に、血の滴る狩猟笛を引きずりながら無気力に私は緋色に燃え盛る舞台上をとぼとぼと歩いていく。


「バーニー・・・あなたは一体・・誰だったの・・・・」


倦むことなく集中攻撃を仕掛けてくる兵隊アリ共がいよいよ私の癇に障る。


「バーニー・・・・バーニー・・・・・・うわぁあああああああああああ!!!!」


予期しなかった真相と考えたくもなかった決別が私の自制心を奪い、一時的な病的興奮状態にさせた。


哀情に満ちた忿懣が怒響となってミラアンセスライドから放出される。


悲痛と怒りのエネルギーから構成された粒子の弾丸(ブレット)が音波に乗せられ、辺り一面に燃え上がる烈炎から火属性を授かり、周囲より襲いかかってくるギルドナイトの眉間を溶解させながらぶち抜いていく。


頭蓋骨を貫き脳内に辿り着いた狂乱のエーテル体は、そこに込められたヒステリックな激情を吐き出すかのように爆発する。


舞台上で攻撃を仕掛けてくるギルドナイト達の頭が、特効(特殊効果)の爆破スイッチを押したかのように端から順に派手な血花火をあげながら破裂していく。


飛び散る肉片と鮮血が狩猟笛の残響に共鳴しながら、舞台上で紅々と燃え立つ焦熱地獄の業火に焼かれ浄化されていく紅蓮華の境地にて、白祖の偶像なる狩猟笛より死の旋律を奏でる白いドレスの少女・・


パラノイアに蝕まれたビルトゥオーソ(神業的な演奏技巧をもつ音楽家)でさえも狂信的に耳を傾けるであろうこの亡失のメロディは、果たして祖龍の意志によるものなのか・・それとも怨毒に取り憑かれた私の不徳義によるものなのか・・・


このミラアンセスライドが偽りの代物であろうとも、私の怒りを血気に変えてくれたコンバーターになってくれたことには違いない。


私の為に作られた舞台は炎の渓谷と化し、皆で縫い繕ったカーテンは轟々と忘却の燃焼音をたてながら思い出と共に灰になっていく。


火の粉と共に舞い上がっていく死灰にさらされながら、ステージエリアを顧みる。


観客席に燃え移ってきた弔火に焼かれていく、かつての友人たち・・・


大義を果たせぬまま散っていった同志諸君。


そしてこの醜い抗争に巻き込んでしまった招待客達に哀惜の念を奏でよう。


死者に捧げる鎮魂曲(レクイエム)とはよく言うが、この時の状況を指すにはうってつけの表現だった。


黙祷を捧げ葬礼を終える。


火がついた木ドアを蹴破る音が聞こえる。


武闘はまだ終わってはいない。


侵入者をすべて皆殺しにするまでは。


決意と共に刮目すると、早速出入り口より殺気満々に乱入してきたナイト数名が飛びかかってきたので、それを打ち返そうとミラアンセスライドを振り上げようすると、どういうわけか刺客達は疾走の勢いそのままに次々と顎から地面に倒れていく。


揃いも揃ってだらしなくうつ伏せになっている躯達の背中を見ると、どれも背骨の中心に白矢が的確に突き刺さっていた。


私はそれを見て希望を取り戻した。


「ロロ・・・・」


思ったとおり、顔をあげる先の入り口では、勇ましい姿で愛弓を構える相棒の姿があった。


「ご無事で何よりです」


息を切らせながら歩み寄ってくるロロの白装束もまた返り血に染まっていた。


「まんまとしてやられたようね」


「なんとお詫びすればよいものか・・・」


ロロもまたステージエリアの異変をすぐに悟り、黙祷を捧げている。


私は業火に盛る舞台を飛び降り、床を埋め尽くす無数の躯を顧みることなくロロに歩み寄る。


「脱出するわよ」


「はい。ナイトはまだ神殿内にいます。私の後に・・」


その頼もしい言葉を遮るようにロロの横を通り過ぎる私。


「大丈夫。私にはこの狩猟笛が。そしてあなたにはその弓がある」


ロロは改めて自分の「勝利と栄光の勇弓」をまじまじと眺める。


「最期までお供致しますぞ」


ロロはそう言うとこの死地にも限らず微笑んでみせた。


そう。


ロロまた生粋のモンスターハンターなのだ。




Recollection No.2_19




「ロロ。このクエストの達成条件は?」


「共に生きて神殿を脱出すること・・・で良いですかな?」


その答えを聞いて私は微笑み返すと、最高の「狩友」と共にギルドナイト達が待ち受ける死の回廊に向かって走り出す。


To Be Continued





★次回ストーリーモードは2/28(木)0時更新予定です★





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