嗚呼ぁあああああああああああああ・・・・・・ダン!!
(慨嘆の叫喚を断ち切るようにドアを力一杯に締め切る)
ジーナ「何処に向かえば?」(振り向くと息子をおぶったデーモンが背中を向けたまま、回廊の向こう側に映る薄暗い中庭エリアを見つめながら右腕を掲げ、合図をするように大きく振っている)
ヒョウウウウウウ・・・・・・・ン
ヒョウウウウウウ・・・・・・・ン
(闇夜の空を火矢の雨霰が赫灼の軌跡を何列にも描きながらこちらに向かって一斉射撃されてくる)
デーモン「当たるなよ」バッ(冷徹な目を一瞬だけこちらに投げかけると中庭に向かって一目散に走り出す)
ちら(右下を見るとアサシン猫が「ニャンだかねぇ~」的な感じでやれやれポーズをかましている)
ジーナ「続きましょう」ダッ(オトモを促し、デーモンの後に続いていく)
ヒョーーーーーーーーーン!!
ヒョーーーーーーーーーン!!
(急降下してくる火矢を交わしながら暗闇の庭園エリアを駆け抜けていく)
トスットスッ!!
ボオオオオオオオオオオオ!!
(周囲の地面に突き刺さる火矢の鏃には油が含まれているのであろう。瞬く間に庭園の草花に燃え移り、その範囲を広げていく)
たしょーーん

アサシン猫「まるで戦場ですな」シタタタタタタ

ジーナ「戦火に巻き込まれる前に離脱しましょう」フフ・・
ダッダッダッダッダッダッダッ
(先を征くデーモンに目をやると前方に弓を掲げながら火矢を連射しているギルドナイト(暗闇に同化するギリースーツを纏っている)の弓軍が見えてくる)
デーモン「奴はまだ舞台会場にいるはずだ。足止めしろ」(伝達を受けた隊長と思しきブラックナイトが部下に進軍の合図を促す)
ブラックナイト「例の物は?」クッ・・(顔の下部を覆っているネックウォーマーを右手で下げると無精髭に囲まれた傷だらけの口元が露わになり、豪胆な面構えがより強調される)
デーモン「その前に我々の保護が先だ」ドサ・・(おぶっているアーロンを地面に寝かせる)
ブラックナイト「四人だとは聞いていない」(こちらを訝しげに見つめながら言う)
ジーナ「お構いなく。こちらは自分たちでやり過ごしますので・・・勿論、今ここで見たこともすべて忘れます」(デーモンが弁解する前に割って入る)
ブラックナイト「フン・・・誰か」ハッ(部下数名が近寄ってくる)
デーモン「必ず約束を守れと伝えろ」バサッ(懐から一冊の写本を取り出し、ブラックナイトの胸にぶつけるように手渡す)
ブラックナイト「伝えるだけ伝えておこう。あとは上の判断だ」スッ・・(写本を傍らに侍っている部下に手渡す。その横では他の部下二名が気絶しているアーロンの肩を支えながらゆっくり後退していく)
デーモン「よく覚えておけ。俺を敵に回せば、今宵、ヒンメルンで起きた事をすべてリークする。同時に貴様らの資金源にも支障がきたすと思え。いいな?」
ブラックナイト「姦雄は未だ健在だと言いたいのか?窃盗団の成り上がりが」(嫌悪感をあらわにデーモンを睨みつける)
デーモン「もとより貴様らなど俺の眼中にない。俺の宿敵は・・・」クッ(夜空を見上げる)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(同じ夜空を見上げると焼け野原になっていく灼熱の明かりを受けた血生臭いブラッドムーンがこちらを喰らい尽くさんばかりの異彩を放ちながら見下ろしている)
デーモン「フッフッフッフッ・・そういえば、貴様らも建前上はそうだったな。だが、貴様らでは倒せんよ。・・っと、お前たちは討伐と表現するのだったな。失礼」フフ・・(老獪な笑みを浮かべながら長い白髭を指でなぞっている)
ブラックナイト「??」(不機嫌そうな顔をしたままデーモンで見つめている)
デーモン「行け。大手柄を逃す前にな」
ブラックナイト「できれば貴様もこの手で殺してやりたいよ。シュレイドの亡霊め・・・行くぞ」ダッ

ダッダッダッダッダッダッダッ
(庭園エリア全体を覆い尽くしていく火の海の中へ消えていくブラックナイト一行を見送る)
デーモン「お前如きの刃では俺は戕せんよ」クックックックッ・・(振り返ると不敵な笑みを浮かべている狂王の姿が)
ギルドナイト「こちらへ。安全な場所まで案内します」(写本を受け取った聡明な顔つきの騎士が促してくる)
デーモン「ああ・・・・」(返答しながらこちらをそれとなく見つめている)
ジーナ「・・・・・・・・・・・・・」(目の前の厳格な古強者が何か言いたげな様子でこちらを見つめている)
ギルドナイト「・・・・・・・あちらにおりますので、話が終わったらすぐに」へこり
タッタッタッタッタッタッ・・(空気を察したのか、アーロンを担いでいく仲間を追いかけるようにその場から走り去っていく若騎士)
・・・・・・・・・・・・・・・
(夜空を見上げると満月が黒雲に包まれ、その姿が朧げになっていく)
ちら・・(すかさず傍らに侍るアサシン猫を見下ろす)
アサシン猫「・・・・・周囲に異変がないか確認して参ります」
シュタタタタタタタタタタ・・(庭園に広がる火災を避けながら遠方に消えていくアサシン猫)
ちら・・(前に目をやると、すっかり背筋が伸び切り、身長も高くなった老練家がその可動域にも何も問題がないことを示すかのように両腕を柔軟な体勢で組みながら、こちらを渇望の眼差しで見つめている)
ジーナ「お変わりないようで。陛下」(両目を閉じて頭を下げたようだ)
デーモン「・・・・・・・変わらぬのはそなたのその美貌だ」(厳しい表情から少しだけ強度が和らぐ)
ジーナ「彼女には劣ります」フフ・・
デーモン「オクサーヌ・ヴァレノフが白の盟約を受けし者なら、そなたは・・・。誠に黒の盟約を受けし者だったとはな・・。時を経て、何一つ変わらぬそなたの姿を見て実感したぞ。ジーナ・ジラントよ」
ジーナ「・・・・・・メサイアの妖精も、古参の乱臣賊子を抱えていたのだから、無理もありません。それとも、あの子が新たな乱臣賊子となるのか・・・・」フフ・・
デーモン「アーロンがそなたに思いを寄せるのも無理はない。血は争えぬということだ」フッ・・(怜悧狡猾な顔から僅かだが人間味を感じる笑みを零す)
ジーナ「・・・・・さぁ、早く。彼女の仲間が現れる前に」
デーモン「そなたは?」(もとの険しい表情に戻って答える)
ジーナ「彼女が如何にしてこのヒンメルンより追放されるのか。見届ける必要があります」
デーモン「・・そうだったな・・・・・。そなたの眼は・・・」(聞こえるか聞こえないかくらいのボリュームで独り言のように呟く)
ギャイイイイイイイイイイン!!
(烈火の向こう側、そう遠くない距離から例のごとく地獄の旋律が奏でられる)
「走れ!!ロロ!!逃げてぇえええええええ!!!!!」(神殿の方から少女の声が聞こえてくる)
ゴオオオオオオオオオオオオ!!
(慌てて振り返ると後方に広がる火の海が少女の叫びに同調するかのように激しく火の粉を吹き上げながら烈々と燃え上がり、その火先がより高く聳える)
ジーナ「行ってください」パチパチパチ・・(振り返る視界に火花が舞い降りてくる)
デーモン「うむ。今後、この神殿は私のものになる。そうなれば・・また顔を見せに来てくれ。アーロンもきっと喜ぶ」パチパチパチ・・
ジーナ「言い訳が楽しみですわ」(対しデーモンは深く鼻から息を吐く)
クルッ・・ダオーーーーーーン!!
(老いし未練を振り切るように急反転してみせると、その超人的な跳躍力をもって空高く飛翔していく)
ちら・・・(舞い上がりながら夜空を見上げると再び満月の姿が明瞭に見えている)
ビュオオオオオオオオオ!!
(下を向き、火の海に向かってダイブしていくと回廊の手前でアサシン猫がこちらを見上げながら手招きをしている)
シュタッ

ジーナ「現状は?」
アサシン猫「ハッ。白いドレスの少女と従者が追手を撒くように二手に別れて移動を開始。それをギルドナイトの一軍が妨害しようとしたのですが・・・」(回廊側に目配せして知らせる)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(回廊を見ると壁には惨たらしい血肉の破片がへばり付いており、地面には何か巨大な鉄槌にでも叩き潰されたかのように打砕され散らばった無数のギルドナイトの「各部位」が真新しい鮮血を迸らせながら廊下を埋め尽くさんばかりに散乱している)
Recollection No.1_15
ピクピクピク・・・ピクピク・・(廊下に近寄ると無残に散らばる手足が生々しい痙攣を見せている)
アサシン猫「あれは狩人なんて生易しい存在じゃない・・・その天使のような見た目とは裏腹の・・」
ジーナ「悪姫。戯曲とは違う現実において、白の盟約を受けし者がどのように堕ちゆくのか・・・今度はそれを拝見しにいきましょう」グシャッ!!(感極まるように痙攣をみせる肉片をミンチ状に踏み潰す)
To Be Continued

★次回ストーリーモードは3/28(木)0時更新予定です★