~翌朝、王都の外街、キングスラムウォール四番街....

サーーーーーーーーーーーーー
(見慣れたスラムの雑多な風景に満遍なく降り注がれる地雨を「例のテラス席(本日は雨天の為、テーブルの中央に立てられている日除け傘が実にありがたく感じられる)」から見つめている一人称視点。一定に降る雨量とその強度から、本日は終日、雨天であることが予期される)
ちら・・(右隣に視点を投げると、黒い頭巾を被った隠密毛(顔の中央か下部、両手、胸の肉球柄のみ「薄紫」)のメラルーが実につまらなそうな顔をしながら、まつエクのお手入れをしている)
スヘイラ「鬱陶しい雨ニャて。ちべたくて嫌ぁ~ニャね」ずずずず(粗末な木製コップに入っている紫色のドリンク(おそらく「お葡萄のジュース」だろう)をストローで不機嫌な心情を代弁するように不快感な音をたてながら飲んでいる)
ジーナ「そのおかげで今日は安心して過ごせます」スッ(いつものように頭に被っている黒衣のフードを両手で直しながら強調してみせる)
スヘイラ「あいつらに顔を見られることがニャいからね」ちら(流し目で遠くを見つめる)
サーーーーーーーーーーーーーー
(雨で視界の悪いスラム特有の「ほそっこい公道」の脇道にて、フード付きの白装束を身に纏った修練者が傘も差さず雨に打たれながら、頭にターバンを巻いたパープル毛のメラルー(こちらは黒い傘を差している)と何やら密談を交わしている姿が朧気に見える)
スヘイラ「雨の中、ご苦労なこったニャ。まさか探し人がこいつらの胃の中だニャんて、夢にも思っていないだろうミャ~」
ちら(目線を下げると、黒毛のシェパードがまるまりながら視点の主の足元で暖を取りながらすやすやと寝ている)
スヘイラ「とんだ肉食獣め。ジーナ様のもとで寝るニャんて、ミャ~幸せな奴だニャ」なでなで(と言いつつもニコニコしながら、椅子から身を屈めて下にいる犬を猫手で撫でている)
サーーーーーーーーーーーーーー
(降りしきる雨の向こう側、フードを被っている白装束の修練者が周囲を警戒するように首をこちらに傾けると、頭巾の中から赤毛のワイルドファンゴの髪型に目つきが鋭い女が顔を覗かせる)
ジーナ「ルチア・ロッティ。元ドンドルマの上位ハンター。18歳にして狩りの腕前には定評があったものの、生来の素行の悪さが災いし、アリーナで大酒を喰らった上、よりによってギルドの要人相手に突っかかり、頭に血が昇りやすい彼女は反論されたのをきっかけにその男を「サイクロン」の鎌で滅多突きした挙げ句、出血多量によるショック死で殺してしまう・・」
スヘイラ「とんでもミャ~マンハントだニャ」やれやれ
ジーナ「指名手配となった彼女は、都から追われるようにシュレイド地方へ逃れ、海を渡るのに必要な旅費を稼ぐ為、ウー家が営む賭博場で一世一代の大勝負に出るも逆に多額の借金を抱えてしまい、返済機能のない彼女を見たウー家の使者は、彼女の経緯も考慮して、ヒンメルン行きを提案。白雪神殿が表向き上、ギルド公認の狩猟団体であった事と、更にはギルドと繋がりのあるウー家推薦の強制労働施設とあれば、事を荒立てぬようギルドナイツの刺客も追っては来ないだろうと予測した彼女は喜んで、この提案を承諾し現在に至る・・。彼女のバイオグラフィーをよく調べてくれましたね、スヘイラ」なでなで(自分から頭を差し出すメラルーの頭を愛でてやる)
サーーーーーーーーーーーーーー
(振り続ける雨の中、話し合いが終わったのだろう、頭にターバンを巻いたパープル毛のメラルーが少し大きめな黒い傘を広げながら、公道の奥へと消えていく白装束の修練者を気にするように時折振り返っては、こちらに向かってとぼとぼ歩いてくる)
スヘイラ「二世様、ご苦労さまニャ」どぞどぞ(と濡れた傘を丁寧にまるめているアニャニャ・カーン二世に対面の空いている席を勧める)
アニャニャ・カーン二世「いやいや。傘をありがとうございましたニャ」(まるめた傘のフックを机の端に引っ掛けながら視点の主に礼を言っている)
スヘイラ「お食事は?お飲みものは?ヘ~イ!マスター!」ぴょれっとな(と椅子に飛び乗るように腰掛ける二世に質問するやいなや店側に向かって叫ぶ)
とっとっとっとっとっとっ・・(視界の左側より、腰の曲がった全体的に「すごく低い」見るからに老いぼれたメラルーのマスターが「背中に括り付けた肉球柄の傘」に覆われながら、実に美味しそうなチェリーパイが乗ったお盆をガクガク震える両手で慎重に支えながら運んでくる)
メラルーのマスター「ググ、グラッ、グラッチェリーパイ、お待たせ致しました・・ニャあああ」コトン・・(かすれ過ぎて聞き取るのが精一杯の声で説明決め込みながら、木テーブルの上にパイの皿をブルブル震えた猫手でやっとこさ置く)
スヘイラ「ささ、二世様、オーダーをニャ」
アニャニャ・カーン二世「う~ん・・それじゃあ、これと同じものを」(とホクホクのチェリーパイを指しながら注文する)
メラルーのマスター「えっ?」(お盆を耳にかざして聞いてくる)
アニャニャ・カーン二世「んニャ、だからこれと同じのを」
メラルーのマスター「えっ?」(同じポーズ)
スヘイラ「これと同じものを作ってくるニャ!!」(大声で言ってやる)
メラルーのマスター「えっ?」(同じポーズ)
ジーナ「グラッチェリーパイをもうひとつお願いします」(その場に腰掛けたまま、慎ましく良く通る声で言ってやる)
にやり・・グッ(「オーダー確かに」みたいなしてやったりの笑みを浮かべながら、こちらに向かって震える右手を掲げ、自信満々のサムズアップをしてみせるヨボヨボなメラルーのマスター)
とっとっとっとっとっとっ・・(何事もなかったかのように「死んだような顔」で店側に戻っていくメラルーのマスター。もちろん腰はすんごい曲がっていて全体的に「すごく低い」)
スヘイラ「ほんと分かってるニャかね・・」んもぉ~
とっとっとっ・・・・(再び後方のマスターを見ると、ちいちゃい店(獣人しか入れないサイズ感の木造カフェ)の前でおもむろに立ち止まるメラルーのマスター)
・・・・・・・・・グッ(振り向き、先程と「まったく同じ笑顔」をみせながら、こちらに向かってサムズアップしてみせるメラルーのマスター)
とっとっとっとっとっとっ・・(またしても何事もなかったかのように歩きだし、ちいちゃい店の入り口を潜って、暗がりの店内へ消えていくメラルーのマスター。店の中がどうなっているのかは、ここからでは暗すぎて目視できない)
スヘイラ「・・・・・・・・・。しょれで二世様、あの女はニャんて?」
アニャニャ・カーン二世「ボリスの行方を探している内に、俺に辿り着いたと言っていたニャ。まずはボリスの居所を聞かれたが、もちろんしらを切ってやったニャ」
スヘイラ「ザマァねぇニャ。しょれにしてもあの女は、どうしてその「ぼりしゅ」という男に固執するニャ?」
ジーナ「好意があったのでしょう。彼女の先程の目は復讐心に染まっていましたから」
アニャニャ・カーン二世「『あんなボリス』でも想い人がいたことに少々戸惑ってしまいましたが、彼女はこちらの言葉を信用したようです。その証拠として、引き続きボリスと同じ取引条件で、これからもいにしえ麻薬を購入したいと言ってきましたニャ。ニャのでこちらとしては、ここで取引していることを口外しニャいのであれば、「ニャにも問題はニャい」とだけ伝えましたニャ」ぷるぷるぷる(両足を高速で回すように振り、雨道で付着した肉球の水を弾き飛ばす)
スヘイラ「相手はお山に住んでる連中ですしニャ。白雪神殿との取引は継続。「ニャにも問題はニャい」ですニャ♪」
アニャニャ・カーン二世「彼女はボリスに代わり、良い後継者となるでしょうニャ」
ジーナ「では、彼女が新しい輸送業務の責任者に?」
アニャニャ・カーン二世「そのようですニャ。荷車は王都の門においてきたそうですニャ」
ジーナ「ということは、ここに来る前に王都へ・・・」ちら・・
サーーーーーーーーーーーーーーー
(先程、二世とルチアが密談していた方向とは別の右側に見える「ほそっこい公道」に目をやると、スラムの景色にはとうてい似つかわしくない高貴な風貌を装った貴族が立派な傘を広げながらこちらに向かって歩いてくる。また、その位置関係から、このカフェテラスがL字道のコーナーに面していることも窺える)
ジーナ「予想通り。ウー家の使者ですわ」(軽く会釈をしながら近寄ってくる若い従者)
従者「ウー様より手紙を預かって参りました。会合の日時が記されているとのことです」サーーーーー(懐から丁重に取り出した封書いりの手紙が雨に濡れぬよう、傘で覆いながら手渡してくる)
スヘイラ「今度はこいつがターゲットニャ?」こそっ(と二世に耳打ちする)
ジーナ「助かります。ここの場所はすぐに?」
従者「ええ。ジーナ様の仰るように「グラッチェリーパイが美味しい店」はどこかと住人に訪ねたら即答でしたよ」ハハハハハ
スヘイラ「こにょ野郎。新参者のくせして、ニャまいきにジーナ様とヘラヘラ会話してからに」シャキーン

とっとっとっとっとっとっ・・(いつの間にかチェリーパイの皿が乗った盆を両手で持ちながら忍び寄ってきていたメラルーのマスターがおもむろに視点の主の左側を「よれよれ」と通過していく)
メラルーのマスター「ググ、グラッ、グラッチェリーパイ、お待たせ致しました・・ニャあああ」コトン・・(またしてもかすれ過ぎて聞き取るのが精一杯の声で説明決め込みながら、全く先ほどと同じ所作で木テーブルの上にパイの皿を置く)
従者「これが噂の・・・本当だ。美味しそうですね」やらないニャ(と二世)
ジーナ「良かったら、一緒にどうです?」えっ!?(と二世)
従者「なるほど・・長寿ジャムに・・・この香り・・・ヒンメルンチェリーですね?」(とボケっと突っ立っているマスターに声をかける)
メラルーのマスター「えっ?」(お盆を耳にかざして聞いてくる)
ジーナ「ヒンメルンチェリーですか?と聞いています」
メラルーのマスター「そ、そ、そうですニャあああ。に、に、ににににににににに、庭で栽培していますニャ」ほれ(と、ポッケから一対の赤紫色のさくらんぼを従者に手渡す)
従者「頂いてもよろしいのですか?」
メラルーのマスター「えっ?」(同じポーズ)
ジーナ「もらってもいいのか聞いています」
にかっ(それを聞き、例の満面の笑みをもって従者にサムズアップして返答するマスター。目がしょぼしょぼしている)
従者「ヒンメルン山脈の樹海で採れるサクランボ・・・ひんやり甘いのが特徴・・・。そのパイもさぞ、ひんやり甘いのでしょうね」にこっ
メラルーのマスター「えっ?」(同じポーズ)
ジーナ「さぞ美味しいのでしょうね、と」
メラルーのマスター「う、うちの、パパパ・パイは「ちょぼっとちべた甘い」ですニャああ」にこり
ジーナ「お時間があれば是非」うんうん(隣で頷いているマスター)
従者「お言葉だけ。もう戻らないとウー様が心配されます。今日はこれで。貴重なお時間、ありがとうございました」へこり
ジーナ「お名前を伺っていませんでした」
従者「ヴィンセント・ベックフォード。以後お見知りおきを」にこっ
Recollection No.1_31
サーーーーーーーーーーーーー(傘を姿勢良くしっかり垂直に掲げ、来た道を戻っていく従者の背中)
スヘイラ「今度のは、えらい真面目そうな奴ニャね」ふ~~ん(とそれを見届けている)
アニャニャ・カーン二世「ニャんだ?ああいうのが「タイプ」かニャ?」
スヘイラ「だりが!!」ガリッ

To Be Continued

★次回ストーリーモードは5/23(木)0時更新予定です★