
コキ~ン♪コォ~ン♪コカァ~ン♪クウォ・ウォ・ウォ・ウォ~~ン・・
コキ~ン♪コォ~ン♪コカァ~ン♪クウォ・ウォ・ウォ・ウォ~~ン・・
(おぼろげな曇り空の下、巨大校舎の門から次々と出て来る様々な種族からなる生徒達。そんな「わちゃわちゃ」した群集の中、偉そうにふんぞり返って歩く蒼火竜と岩竜の姿も見える)
~三年B組教室内....

リカ「ふふふふふ」(にこにこしながら机上の鉢に植えられたポインセチアを眺めている)

ザンコ「あら、まだ見てるんですの?」ざわざわざわ(その背後ではクラスメイト達が帰宅の準備を始めている)

トンコ「授業中もず~っと見ていたニャ。そんなにおもろいニャ?」
リカ「ふふ。この赤い葉っぱがね、ムズムズしてるの。これって冬が到来する証拠なのよ?」
ザンコ「冬の知らせと共に、一晩で「どでかい」葉っぱになるんですのよね?珍妙極まりないですわ」
トンコ「するってぇと、明日から渓流地区に冬が来るってことニャ。UBUにゃんの布団を分厚いのに変えてやらニャいかんニャ」みゅ~

ザンコ「さ、そしたら早く帰りましょう」
トンコ「だにゃ。帰宅部のあたち達は、余計な事件事故に巻き込まれないうちに、とっとと帰るのが利口ニャ」
リカ「うん。すあまちゃん、行きましょう」(何やら後ろでがさりごそりと帰宅準備を慌ててしているすあまに声をかける)
すあま「すまん。今日はちょいと野暮用があるんや。ほな」したたたたたた

ザンコ「なんですの?あれ」さぁ~~


ウルコフ「はぁ~終わった終わった」ぽんぽん(肩を叩く白兎獣。その後ろの席ではガイウスが両腕を組みながら深く着席したままである)

真里ノス「よし、ウルコフ。それじゃあ部活行こうか」
ガイウス「ちょっと待て」ぐいっ

ウルコフ「なんですか?ガイウスさん」
ガイウス「・・・・・・・・・・・・・・」(何も言わず視線を前に向ける)
真里ノス「・・・・・・・・・・・」ちら(それを受け、同じ方向へ首を傾ける)

ジュニャーナ「皆さぁ~ん。帰宅前にちょっとお話がありまぁ~す」はい注目~
ざわざわざわざわ
(教卓前の風牙竜に視線が集まる)
リカ「なんだろ・・」ざわざわざわざわ
ガイウス「・・・・・・・・・・」
ジュニャーナ「突然なのですが、ここで悲しいお知らせがあります」
トンコ「なんニャ・・・」ざわざわざわざわ
リカ「教卓の上・・・・」
ザンコ「え?」
ざわざわざわざわざわざわざわ
(どよめきの中、大きな教卓の上にぽつんと立っているアンコとシミッティ)
リカ「アンコさんとシミッティ・・・」
「あたちのモンハン日記」
~借りぐらしのアンコさん~
サカナスキー「えええええええ!!引っ越しするだってぇ~~~~~~!?」じゃばじゃば

ざわざわざわざわざわざわざわざわ
アンコ「・・・・・・・・・」
シミッティ「・・・・・・・・・」(教卓の上で沈黙を貫いたまま俯いている二人)
ブナハブラの真島「引っ越しって、どういうことだよ!?」ざわざわざわ
ジュニャーナ「皆さん、アンコさん達、オジョウサスライアリの特性はすでに知っていますね?」
オオナナホシの七瀬「確かサスライアリは、同じコロニーには長くいないって・・・ちょっと待って!!そしたら何処か別のコロニーに引っ越ししちゃうってこと!?」
アンコ「・・・・・・・・・・・・」こくり(小さく頷き、肯定を示す)
七瀬「そんな・・・・」ざわざわざわ
ジュニャーナ「皆さん、落ち着いてください。声が届かないアンコさんに代わり、先生が・・」
トンコ「だめニャ!!アンコ本人の口から聞くニャ!!」
ザンコ「皆さん!!前に!!」
どどどどどどどど

(教卓を囲うように募るB組の生徒達。ジュニャーナは最後尾でただ一人着席しているガイウスの横に並び、我が生徒達を後ろから温かく見守っている)
ガイウス「大丈夫なのか?子供たちに任せて」(前を見つめながら隣の巨大な風牙竜に問いかける)
ジュニャーナ「これも教育です。あの子達は別れという局面を乗り越え、共に成長していくのです。それぞれの種族に与えられた運命を尊重しあいながら・・・」
七瀬「いつ・・引っ越しするの?」(トンコの頭に乗っている)
シミッティ「明日の早朝・・でしょ?アンコ」
アンコ「・・・・・・・・・・」こくり
真島「そんな・・急過ぎるだろ!?」(リカの頭の上に乗ってる)
トンコ「本当に越すニャ!?アンコ!!」
アンコ「・・・・・・・。3日くらい前から、家族達が荷物をまとめだしたの・・。その行動は間違いなく・・・引っ越しの準備・・・」
真島「なんでもっと早く言わなかったんだよ!!」
七瀬「大声出さないで、真島!アンコさんだって言い出しづらかったんだよ!ね?アンコさん」
アンコ「ごめんなさい・・・」
ウルコフ「で、でも、はっきりと聞いたわけじゃないんだろう?」そわそわ

真島「そうだよ!せめて冬を越すまで待ってくれるよう、親に言うとかよ!?」
トーマス「それは酷だよ、真島君。だって彼女たちの家族はみんな普通種なんだ。アンコさんは家族の行動をみて、それに合わせて暮らしているんだ。無理を言っちゃダメだよ」
真島「うるせえぞ、トーマス!!てめぇ、ダチがいなくなっても平気なのかよ!?」
トーマス「それは違うよ。僕は彼女たちの生活を思うからこそ言ってるんだ」
真島「魚類ってのは体表の温度だけじゃなくて、心もつめてぇんだな!!見損なったぜ!!トーマス!!」ブッ

サカナスキー「やめろよ!!真島!!トーマス達、魚類だって群れをなして暮らす生物だ!!その群集を食べにくる大きい魚類や魚竜だって水中には存在する!!君ら飛甲虫だってそうだろ!?大型モンスターの脅威の前にはどうすることも出来ない食物連鎖の形があるように、アンコさん達にも抗えない「習性」というものが存在するんだ!!トーマスはそれを分かっているからこそ・・」
ブブブブブブブ!!
(サカナスキーの顔面に張り付くブナハブラ)
真島「うるせえ!!だったら俺たち(知的生命体種)がそのルールを変えなきゃいけねぇんだ!!ハンター共に殺された親父は俺にそう残して死んでいった!!なんの為に俺たちは言葉を喋れるのかってな!!」
七瀬「真島・・・」
トンコ「よすニャ!!真島!!今は喧嘩していても仕方ないニャ!!」バッ

トーマス「仮にアンコさん達の家族に、言葉が通じたところで、厳しい冬を越せるはずがない。渓流地区には雪も降るんだ・・・どこか温かい地に向かった方が・・・彼女たちの為なんだよ」
真島「・・・・・・・・・・」(トンコの腕の中で震えている)
ウルコフ「そうなのかい・・?」
アンコ「・・・・・・・・・・・・・」こくり
七瀬「じゃあ、本当に明日の朝には・・・・」
アンコ「ごめんなさい・・・・・」こくり
リカ「せめて・・せめて旅立つ時、お別れを出来ないの?」
シミッティ「それも無理なの・・・」
サカナスキー「どうしてなんだい?」
トーマス「彼らの行軍中に挨拶をしてご覧よ?人間や獣人、それにモンスターが近寄れば、きっとアンコさん達の家族はパニックを起こし、隊列を乱し、散開してしまう。コロニーの近くでもそうだ。オジョウサスライアリ達は警戒してコロニーに閉じこもってしまう。そうしているうちに冬が来てご覧よ?僕らのせいでアンコさんの家族をコロニーごと、死滅させてしまう結果になってしまうんだ」
サカナスキー「僕らにとってはハッピーエンドが、アンコさん達にとってはバッドエンディングってことなのか・・・・」
真島「なんだよそれ・・・まるで俺たちが邪魔者みてぇじゃねぇか!!」
アンコ「ごめんなさい・・・本当にごめんなさい・・!」(退化した目元に涙らしき水分が浮かび上がる)
リカ「それじゃあ・・今ここでお別れをするしかないの・・?」(胸には特選ポインセチアの鉢を抱いている)
アンコ「帰って荷造りをしないといけないから・・少しの時間だけなら・・・」
リカ「そんな・・・もう少しでこのポインセチアも大きくなるのに・・・・」
真島「クソォオオオ!!何が三種共存だ!!結局俺たち種族は、人間や獣人みたいに、いつまでも一緒に暮らすことなんて出来やしねぇんだ!!バカ野郎ぉおおおおお!!!!」ブブブブブブブブ

七瀬「待って、真島!!」ブブブブブブブ

アンコ「みんな・・・・本当にごめんなさい・・・・」ぎゅっ(泣きながらシミッティが優しく抱き寄せる)
しくしくしくしく・・・・(アンコ達の机を囲う生徒達は皆、俯き、落胆の表情を隠せないでいる)
ザンコ「シミッティさん。あなたもアンコさんと一緒に引っ越しするんですのよね?」
シミッティ「・・・・・・・・・」こくり
ザンコ「じゃあ決まりですわ。これからクリスマスパーティーをしましょう」
アンコ「え・・・・・」ざわざわざわざわ
トンコ「そうニャ!あたち達が元気に見送ってやらニャんでどうするニャ!お別れ会も含めて、少し早いクリスマスパーティーを開催するニャ!!」そうだよ!そうだよ!
アンコ「みんな・・・」
シミッティ「良かったね、アンコ。B組のみんなで」にこ
アンコ「うん!!」
わいわいがやがや
ガイウス「冷たい空気を一蹴したか。流石はB組の生徒達だ」
ジュニャーナ「はい。本当に立派な子達です。それにしても・・・いつになっても別れというのは慣れませんね」(そういう風牙竜の目には涙が溢れている)
ガイウス「・・・・・・・・・・・・」
ジュニャーナ「そういえば・・すあまさんの姿が見えませんが・・」
ガイウス「心配いらん。コーネリアスと共に校長室へ向かった」
ジュニャーナ「??」
ガイウス「さて・・我々も手伝いに行こう。美術部の下にな」ザッ

元気でねぇ~♪わいわいがやがや♪
(教卓の前では小さな別れの宴が開かれている。ウルコフとサカナスキーをはじめ、一部の生徒達が肩を組みながらお別れの歌を聴かせる中、教卓上ではミフネが用意した虫用のパピルス紙にそれぞれお別れの言葉を「慎重に」書いていくトンコ達の姿も。それを微笑ましい表情で見つめるアンコとシミッティ)
アンコ「・・・・・・・(私は一生忘れない・・・このクラスのみんなのことを・・・)」(同じ虫系の小さな生徒達がこぞってアンコとシミッティに抱きついていく)
~翌朝....

ゾロゾロゾロゾロゾロ・・・・
(枯れ葉募る大木の根本から行軍を開始しているピンクのオジョウサスライアリの群れ)
アンコ「よし。忘れ物はないね。行こう、シミッティ」むんず

シミッティ「うん・・・」
ゾロゾロゾロゾロゾロ・・・・
(すっかり枯れ木ばかりになってしまった森の大地を進むアリの行軍。みんなそれぞれ「荷物」を運搬している)
シミッティ「ここ・・通学路だった道だよ」
アンコ「まだ紅葉だった頃、そこでUBUさんの頭にゲゲゾンが落ちてきたんだっけ。もう大騒ぎだったわね♪」
シミッティ「あっちの河川エリアでは、川村さんが寝ながら歩いてて川の中に落っこちちゃったんだよね。ザンコちゃんが一所懸命、介護してたのを覚えているわ。川村さんって「お騒がせな人間」だからね。ザンコちゃん、大変そうだった」あははははは
アンコ「あ・・・この感じ・・・」ピクピク(触角を動かし、何かを感知している)
こんこんこん・・・

(空から美しいダイヤモンドダストが舞い降りてくる)
シミッティ「雪・・・・・・アンコの家族の判断は正しかったようね」こんこん・・
アンコ「・・・・・・。みんなもこの雪を見てるかな・・・」こんこん・・
シミッティ「きっと大騒ぎじゃない?すあまちゃんなら「雪合戦しよかぁ~!」って言ってるに違いないわ。それに同調するようにウルコフ君達、男子生徒が後に続くの。いつものパターン♪」
アンコ「シミッティはB組のみんなを三年間、陰ながら見守ってきたんだもんね・・誰よりもクラスのみんなのことを知ってる」
シミッティ「うん・・。短い間だったけど、本当のクラスメイトになれて幸せだった・・」つぅ・・(つぶらな瞳から美しい雫のような涙をこぼす)
アンコ「今からでも遅くないよ?あなたは戻ってもいいんだよ?シミッティ」
シミッティ「うううん。あたしが決めたことだもの。あなたと一緒に外の世界のことが知りたいの。それにあたしがいなくなったら、コロニーで喋れる唯一の「ルームメイト」を失うことになるわよ?」
アンコ「・・・・・・ありがとう、シミッティ」ぎゅっ
ゾロゾロゾロゾロゾロ・・・・
(アンコ達がいる行列は、次第に見晴らしの良い丘に辿り着く)
シミッティ「ここ・・昨日、リカちゃんが特選ポインセチアを採取した場所・・」
アンコ「大きくなったかな。冬の到来と共に・・・・」
こんこんこん・・・
(空より降り注ぐ雪の結晶を見上げながら行軍に続くアンコとシミッティ)
アンコ「ねぇ、丘の上なら、学校が見えるんじゃない?あたしは目が見えないから、わかんないや。きっと今頃、みんな授業中ね・・」
シミッティ「あれ・・・・嘘!!」
アンコ「え・・この匂い・・・・・B組の!?」きょろきょろ
シミッティ「みんないるよ!!」
ひらひらひらひら・・・・
(対面に見える丘上に聳え立つ古城のような学校の屋上から、巨大なバナーを掲げるウルコフ、真里ノス。バナーの下ではB組の生徒達がみんな手を振っている。その傍らではジュニャーナ先生とガイウス、そしてコーネリアスの姿も見え、更にはUBUとカーブーも並んで手を振っている)
アンコ「いるって、B組のみんなが!?」
シミッティ「うん!!先生にガイウスさん、コーネリアスさん・・それにUBUさんと川村先輩も一緒だよ!!」
アンコ「みんな・・・私達を見送る為に・・・・」
シミッティ「待って!それだけじゃないわ!何かバナーに書いてある!!」
アンコ「読んで!!シミッティ!!」
すあま「みんな!!昨日、徹夜で作ったバナーをもっと見えるように掲げるんや!!」おおおおお!!(バナーの下に潜り、両手を掲げてバナーを持ち上げる人間と獣人の生徒達。真島、七瀬ら虫系の生徒達はバナーを噛んで、上に広げる)
七瀬「こらぁ~!真島公平!!根性見せなさいよね!!」ん~~~~
真島「るっせぇ!!やってらぁ~!!」ん~~~~(その下ではメッシに似た獣人生徒がミフネに肩車をしてもらい、紗幕をより高く掲げている)
シミッティ「え・・と・・・」
アンコ「なんて書いてあるの!?」
元気でね アンコ シミッティ
短い間だったけど とても楽しかったです
離れていても いつまでも 一緒だよ
三年B組生徒一同(と、おまけの書士隊とその書記、その護衛の狩人二名)
アンコ「みんな・・・・・」
シミッティ「リカちゃんが何かを見せようとしてる!!」
リカ「こんなに大きくなったよぉ~~~~!!」(泣きながら頭上に掲げる鉢には、その何倍も大きくなったポインセチアの真っ赤な葉っぱが美しく開いている)
シミッティ「ドスポインセチアになったんだ!!すごいよ、アンコ!!本当に一晩で大きくなったんだよ!!」
アンコ「クリスマスの思い出をありがとう・・・これで本当にみんなと・・・」
すあま「元気でなぁあああああああ!!!!うちらは二人のこと、一生忘れへんからなぁああああああああああ!!!!!」(泣きじゃくりながら叫ぶ)
トーマス「ウルコフ君!!君の声が一番届く!!僕らの分も、思いっきり別れの咆哮を飛ばすんだ!!」
ウルコフ「すぅ~~~~~~~~・・・・・」
真里ノス「いけぇえええ!!ウルコフ!!」
アンコさぁああああああん!!
シミッティさぁああああああん!!
さようならぁああああああああ!!
喜怒哀楽を分かち合った共同体においての別れというのは、どんな理由であれ、受け入れ難いもので・・。まだ若いB組のみんなにとっては、それまでの仲睦まじい時間を引き裂く残酷な通例でしかないのです。けどそれと同時に、アンコさんとシミッティさんはB組のみんなから生きる意味と活力を与えられ、そしてB組のみんなも人生観を大きく成長させる大切な思い出を二人から貰ったに違いありません。
シミッティ「私も・・私もいつまでもみんなのこと忘れないからぁああああああ!!!!」
アンコ「大好きだよぉおおおおお!!!!B組のみんなぁああああああああ!!!!またいつかユクモに帰ってくるからねぇえええええ!!!!」
種は違えど。その言葉の意味は我々が思っている以上に過酷で、無慈悲で、時に軽薄であったりします。ですが、それら摂理の壁を超越した瞬間、言葉では言い表せない生命の喜びを諭してくれるのもまた事実なわけで・・。その共有的幸福感をこうして少しでも分かち合うことが出来たこの瞬間、私も心からアンコさんとシミッティさんの明るい未来を、B組の皆さんと共に祝すとしましょう・・
コーネリアス「どうか、ご無事で・・・」ぱたん(日記を閉じると同時に、その頭を撫でる主人。UBUとカーブーは抱き合いながら、えんえんと鼻を垂らしながら号泣している)
さよぉ~ならぁ~~~・・・・
(雪がこんこんと降る中、別れの慟哭をあげるアンコとシミッティ。サスライアリの長く、そして力強い隊列が、白い雪の大地を延々と続いていく・・)
借りぐらしのアンコさん/完


次回「あたちのモンハン日記」ザ・中継ぎ記事は
12/13(火)0時更新 バベル中学★三年B組の生徒達をご紹介♪
をお送り致します♪それじゃあ次回もみんな仲良く読も見よう
